そして「ポスト真実」は往々にして「善人には良い事が起こり、悪人には悪い事が起きる公正な世界」という仮説を強化し、現実世界に存在する矛盾や不合理への地味で手間のかかる改善策を否定し、単純な不満をつのらせて社会の分断や亀裂を深めてしまう。
それがひとつの形となって現れたのが英国の国民投票であり、米大統領選挙であったというのだ。
そして、その亀裂が修復不可能になった時、いったいなにが起こるのだろうか?
その「可能性」の謎に挑戦したゲームが存在する。例えば「シャッタードステーツ(引き裂かれた国)」というゲームではアメリカが分裂して内戦を繰り広げるが、手持ちの全戦力を失っても脱落せず所持金を引き継いで再起する。つまり、ゲームは陰謀史観に基づいており、プレイヤーは合衆国を影から操る黒幕的存在として設定されているのだ。また、もう少し現実的な設定の作品として「クライシス2000」がある。当時としては非常に本格的な政治的設定を持っており、特に軍事以外の要素、中でもネットを含む情報の流れや政府機関の組織的側面をシステムに盛り込んだ、特異な存在であった。
この「クライシス2000」では物理的な軍事力と情報をコントロールする力がほぼ同等の重みで扱われており、現代アメリカにおけるメディアの重要性を表現している。加えて、北米の各地域についても都市化の進展度や情報ネットワークの整備の度合いによって分割されており、デザイナーがいかに大衆の意識をコントロールする道具としての、そして状況を判断するための情報の力を重視しているかが伝わってくる。
このゲームは雑誌付録の形式で少部数しか流通しておらず、知る人ぞ知る存在だった。ところが、現在のアメリカを予見したゲームと評価する向きもあり、雑誌にはアメリカの世代間分裂とネット上での内戦を予見した記事も掲載されているというのだ。
執筆者はどのような人物なのか? また、予見された可能性は現実となるのか?
そこには大きな謎が隠されている。
(了)