三沢さんの訃報(ふほう)に国が立ち上がる。
今回の三沢さんの事故を受け、自由民主党はきょう18日午前中に予定されている合同部会で「格闘技興行における事故死の問題」を取り上げる。その場にはノアの仲田龍統括本部長、新日本プロレス菅林直樹社長、全日本プロレス武藤敬司社長が出席を予定。各団体に今回の事案の見解を求め、現状の把握と今後について意見交換会を行う。
その場で馳氏は、日本プロスポーツ協会への復帰、統一コミッション設立、ライセンス発行、日常の選手の健康管理、興行における選手管理の5点を勧告する。本紙はその馳氏を独占直撃取材した。
すべては不慮の事故を未然に防ぐため。昨年10月には都内で会社員レスラーがプロレスの練習中に首を強打し、事故死。合同練習の主催者への監督責任が問われている。それだけに馳氏は「プロスポーツ団体として最低限やらなければならない体制を整えなければならない。(今までプロレス界は)自主的なルールがなかった。残念でしたね、で終わらせてはいけない」と強く訴える。
2006年には、ノアを中心に日本プロレス団体の統一コミッション設立に向けGPWA(グローバル・レスリング連盟)が発足。だが、当時は新日本、全日本といった老舗団体はさまざまな事情があり不参加を表明していた。それに関しても馳氏は、マット界全体をにらみ警鐘を鳴らす。「今は業界独特の軋轢(あつれき)とかそういうことを言っている場合ではない。業界自体が日本から抹殺されかねない。興行として成り立たない。環境作りをしないとプロレスって存在しなくなる。存在するのはビデオとテレビの昔のコンテンツとして歴史の遺産になってしまう。現実世界としては客が来なくなり、自分の首を絞めることになる」
それだけではない。「親が安心して子供を預けない。(プロレスよりも)『まだK-1とか総合格闘技をやりなさい』となる可能性の方が高い。あいまいといわれた格闘技にルールをしっかりと持ち込みイベント性を持たせた。K-1や総合格闘技が発展したきっかけはまさしくルール化です」と近い将来人材不足に陥ることも指摘。そういった事態に陥らないためにも業界の自主的なルール作り、選手の健康管理の徹底を説く。
「選手の健康管理は大前提。興行の日程、体調管理のため看護師、トレーナーの同席。定期的な健康診断の実施を整えなければならない。こういうことは無法地帯のまま放置しておいてはいけない。社会的な影響力もあるプロレス業界として、リングの中は無法地帯でもいいかもしれないけれども、安心して選手が試合をすることができる環境作りをすることは各団体側の責任」と語り、続けて「今こそ業界の発展を目指していく体制と、守るべきルールをつくるべき」と強調する馳氏。
プロレス界は今、大きな分岐点に立たされている。