これまでダートは未勝利勝ちがあるだけで、さしたる実績もなかった白毛のユキチャン。にもかかわらず、関東オークスはその愛くるしい見た目に加え、鞍上が天才・武豊に乗りかわったことで2番人気に支持された。
だが、いざレースが始まると、そんな“色眼鏡”を吹き飛ばす圧巻のパフォーマンスを披露した。1周目の正面スタンドで早くも先頭に立つと、直線では馬なりのまま後続をグイグイと引き離していく。終わってみれば1番人気プロヴィナージュに8馬身差をつける独走劇だ。勝ち時計2分14秒7はレースレコード。父クロフネをほうふつとさせる衝撃的な強さだった。
武豊騎手は「かわいいだけではなく、強い姿を見せられてホッとしました」と満面の笑み。一方、後藤師も「勝つときは楽に勝てるだろうと思っていました。いい結果が出せてよかったです」と口元をほころばせた。
この中間は疲れも見せず、いたって順調にきている。5日にはポリトラックで5F64秒7、上がり3F36秒4→12秒0(G前仕掛け)をマーク。併走馬を1秒ちぎった回転の速いフットワークは状態の良さをうかがわせた。
しかし、楽観ばかりしてはいられない。JDDはダート4戦無敗のサクセスブロッケンをはじめ、牡馬のトップクラスが出そろう。
それでも、後藤師は強気な姿勢を崩さない。「サクセスブロッケンはユキチャンと同じ若い3歳馬だし、不安要素はたくさんある。(スパーキングレディーCで)古馬牝馬を相手にするより、むしろやりやすいんじゃないかな。状態も一生に一度あるかないかというぐらいいいからね」
日本で初めて白毛馬として認められたハクタイユーから29年。色物扱いが多かった白毛馬の歴史がユキチャンの“脚”によって、大きく書き換えられようとしている。