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〈企業・経済深層レポート〉“スーツ離れ”が深刻化 紳士服業界で大手4社が減収減益

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提供:週刊実話

 大手商社が1週間に一度、「脱スーツデー」を設けるなど、もはやビジネスマンの戦闘服がスーツではなくなりつつあり、“スーツ離れ”が急速に広がりつつある。これを受け大手紳士服量販店の経営が徐々に圧迫されている。

 苦戦が著しいのは“洋服の青山”で有名な「青山商事」、AOKIを展開する「AOKIホールディングス」、紳士服のコナカを展開する「コナカ」、紳士服のはるやま等の店舗運営を行う「はるやま商事」といった大手紳士服量販店で、2019年3月期までの決算数字が4社とも減収減益となった。

 青山商事は、売上高2503億円で対前年比1.8%減。営業利益は対前年比マイナス29%、純利益も対前年比でマイナス50%となり、57億2300万円となった。業界2位のAOKIホールディングスは、売上高が約1939億円で対前年比マイナス約2.3%減。営業利益は対前年比マイナス10%で約134億円、純利益は46億円で対前年比マイナス37・6%だ。業界3位のはるやまは、売上高が対前年比2.7%減の555億5400万円で営業利益はマイナス24%、業界4位のコナカは、売上高は約651億円で対前年比マイナス4.4%減で営業利益は約半減となっていて、前述の2社に加えて、はるやま、コナカも業績が悪化しているのだ。

 大手紳士服量販店が、ここまで苦境に追い込まれている理由はどこにあるのか。紳士服業界に詳しい流通業界関係者が、その理由をこう説明する。
「もちろん、大きな理由は、ビジネスシーンでスーツ離れが進んでいるからですね。多くの職場でカジュアル化が進み、昔は商談時にスーツを着用しないと失礼になるという考えでしたが、最近はジャケットとパンツという組み合わせで挑んでも文句を言う人が少なくなりました。このビジネスシーンでのスーツ離れは世界的な流れで、日本もその流れに沿って脱スーツが進んでいるのです」

 そもそも、日本でスーツ離れの契機となったのは、小泉政権時代に環境大臣だった小池百合子氏が、2005年に提唱した、夏にネクタイや上着をなるべく着用しないことを推進する「クールビズ」だ。ファッション業界関係者は語る。
「元々、若い人たちは堅苦しいスーツをあまりカッコいいとは思わず、魅力を感じていませんでした。そのため、クールビズは若者中心に圧倒的支持を得たのです」

 中高年にまでクールビズの普及が加速したのは、2011年の東日本大震災の影響が大きいという。
「節電対策のためにIT業界を中心に、ジャケットとパンツを組み合わせるなどオフィスのカジュアル化が急ピッチで進んだのです」(同)

 スーツ離れが進んだ理由はこれだけではない。
「戦後1947年から1949年生まれのいわゆる『団塊の世代』は、スーツを着用してバリバリ働いていた世代で、スーツにもおカネをかけていました。それが2007年を皮切りに続々と定年を迎え、あまりおカネをかけない人たちに世代交代したのです」(紳士服業界通の記者)

 実際、総務省の家計調査によると、1989年に一世帯のスーツの年間支出金額の平均額は1万6000円超。それが2018年には約5100円と、3分の1にまで減少している。

 社会全体のスーツ離れの流れを、現状は止められそうにない。そのため、大手紳士服量販店は他業種に進出して、時代の変遷に対応しようと必死だ。

 「AOKIホールディングスの新収益の柱に成長しつつあるのは、ブライダル事業です。AOKI傘下の結婚式場などを運営するアニヴェルセルは、欧州の街並みを模して作られたガーデンハウスでの結婚式など、ゲストハウスウエディングスタイルを取り入れた式場が人気を集め、業績が急上昇。2019年3月決算では売上高254億と、グループ全体の15%を占め、紳士服の不調を支えるほどに成長しています」(経営コンサルタント)

 さらにAOKIはカラオケ事業とカフェ事業も展開し、大きな収益を上げるに至っているという。
「他の紳士服量販店だと、青山商事は飲食店経営や鍵の複製や靴の修理を手掛ける『ミスターミニット』を傘下に入れました。コナカも『とんかつ専門店 かつや』などの飲食店や『スペースクリエイト 自遊空間』(インターネットカフェ)などを展開しています」(同)

 スーツ離れが深刻化した紳士服業界では、本業だけでは成り立たなくなったということだろう。打開策が見つからない限り、今後も紳士服量販店は、生き残りのために他業種に進出していくしかないのかもしれない。

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