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キャバ嬢が生まれる瞬間(27)〜いじめっ子を見返すためにキャバ嬢になった女〜

 斉藤愛美(20歳・仮名)

 私は高校時代、ずっといじめにあっていた。標的となった原因は今だによくわからないけれど、おそらく女子グループの気に入ってる男子と私が、仲良くしていたからだと思う。その女子グループとは特別仲が良いというわけでもなかった。でもいつからかいじめられるようになってたんだよね。

 最初はバレないよう物を隠されたり、私が教室にいない時に財布のお金を勝手に抜き取られたりしてた。ある日、移動授業から戻ってきたら、そのグループが私の鞄を漁ってた。「何してるの」って声を上げても「あ〜あ、見つかっちゃった」って何の悪びれる様子もなく、教室を出て行ったのを憶えてる。私もその頃はまだ意志が弱く、それ以上なにも言えなかった。一番困ったのは通学の自転車のサドルを隠された時かな。しばらく立ち漕ぎで帰ってたのはつらかったし、そういう陰湿ないじめが最後まで続いて食事も喉が通らないほど病んだ。

 今年の成人式の後、同窓会があったんだけど、久々に彼女達と再会した。あいつらは過去、私にしたいじめなんて何もなかったかのように、接してきたんだよね。いじめた方は忘れてるのかもしれないけど、いじめられた方は絶対に忘れない。その同窓会でいじめっ子の主犯格の会話から聞こえてきたのが、「今はキャバクラ嬢として隣街で働いている」ってことだった。過去をどうしても忘れられない私は、どうしてもその子に勝ちたかったんだよね。

 短大卒業後、何もしてなかった私は過去のトラウマを克服するために、その子が働くキャバで働くことにした。出勤初日、私がまさか働きにくると思ってないから相手はとても驚いていた。それでその子の本性は何も変わっていなくて「なんでいるわけ? あんたなんかに勤まると思ってんの?」といきなり言われた。でも私は「もう昔の私じゃないから」って強く言い返すことが出来ただけでもここで働いてよかったと思った。

 たしかに簡単にやれる仕事じゃないのはわかってる。でも彼女がいる場所で過去と向き合い、いじめっ子にどんな形であれ勝たなければ前に進めない気がした。だから私はこれからキャバクラでナンバーワンになることを目指そうとおもいます。

(取材/構成・篠田エレナ)

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