彼は私の家に遊びに来る時、必ずケーキを買ってきてくれました。私は甘いものが好きなのでとても嬉しかったのですが、その際、彼は必ず食べている様子を撮影するのです。他の恥ずかしい撮影は一切なく、いつも彼が撮りたがるのは、私がケーキを食べている時だけ。女の人が食べている姿が好きなのかなと、最初は思っていたのですが、なぜか普通に食事をしている時は全く興味を示しません。
またケーキを食べている姿だけでなく、まだ飲み込んでいない口の中にある、ぐちゃぐちゃのケーキをアップで撮影するというのもよくしてましたね。私は汚いので嫌だったのですが、彼がどうしてもというので、言うとおりにしてました。
そんなある日、彼がシャワーを浴びている際、脱ぎ捨てたジャケットをハンガーにかけてあげた時のこと。ポケットからティッシュが飛び出しているのを発見しました。それを触ってみると、ゴツゴツとした感覚があり、ティッシュの中に何かプラスチックのようなものがあるようでした。何だろうと思った私は、それを開けてみると、中から白い液体の入った注射器が出てきたのです。何となく匂いを嗅いでみると、もわ〜っとした、とても嫌な香りがしました。
その瞬間、過去、彼からプレゼントされたケーキのスポンジが湿っていたことや、これと同じ匂いを感じたことがあるのを思い出しました。そして、もしかすると彼は、この注射器を使って、ケーキに液体を注入し、それを食べている姿を撮影して楽しんでいたのではないかという疑いが私の心に浮かんだのです。もうその液体がなんだったのかは、考えたくありませんね。とにかくその後、何事もなかったかのように振舞いましたが、すぐにLINEや電話をブロックし、以後全く連絡を取っていません。その時の体験以降、人から貰った食べ物には、一切口をつけられなくなりました。
(取材/構成・篠田エレナ)
写真・blondinrikard