日本で発生したバイトテロの中で、最も人々の怒りを買った事件と言えば、2013年に蕎麦屋で発生した多摩大学生のバイトによる事件だ。
当時多摩大学に通っていた男子学生の1人が、食器洗浄機の中に入り、「洗浄機で洗われてきれいになっちゃった」と投稿する。さらに、食器を胸に当て、「オッパッピー」などとふざけたツイートをした。撮影者など複数人のバイトが、この事件に関与していたのだ。
これを見たネットユーザーたちは、店主にクレームの電話を入れる。店側も被害者だったのだが、「教育がなってない」「不衛生だ。何をしているんだ」という具合で、店を営業することが難しくなってしまった。
蕎麦屋は1984年に創業され、一時は3店舗を持つほどの人気店だった。しかし、経営不振に陥り、創業者も他界。その妻が事件のあった店舗に絞り、再起をかけて奮闘していた。
このニュースが流れると、怒りの矛先は多摩大学の学生へと移る。2013年の日経ビジネスに公開された店主女性の手紙によると、事件発覚後、主犯格の学生は一切謝罪せず、スマホを見ていたのだという。
結局、この件が引き金となり、蕎麦屋は破産。なんとか店を守ってきたが、この一件をきっかけに店を畳むことになってしまった。負債は3300万円と報じられている。
店主の女性は不適切行為に関わった4人の学生について、1385万円の損害賠償を求めて提訴に踏み切る。しかし結局は、裁判所から和解を勧められ、主犯格の元大学生は129万円、撮影に関わった3人は20万円から30万円の和解金を支払うことで手打ちとなった。一部報道によれば、犯人グループは未だに明確な謝罪をしていないそうで、女性はこの結果は必ずしも本意ではないと話しているそうだ。
この事件発生後、「アルバイトを雇うリスク」について活発な議論が交わされることになった。この蕎麦屋のような個人商店では、厳しい教育が難しいことや、監視の目が行き届きにくく、バイトテロを誘発しやすい。そのことを広く認知させる事件となった。
事件を起こした多摩大学の学生が現在何をしているかは不明だが、顔と名前はネットに流れており、一生蕎麦屋をバイトテロで潰した学生として生きて行くことになる。店主女性や、店を守ってきた創業者の無念を考えれば、当然の報いと言えるだろう。
文 櫻井哲夫