タネを明かすと、タカタが計上したリコール関連費用は弁護士の相談費用などで、部品の交換費用は一切カウントされていない。これはリコール費用を立て替えた自動車メーカーと協議し、責任の割合に応じて決める仕組みになっており、話し合いの修羅場はこれから。従って天文学的な数字に膨らみかねないリコール費用の計上は決算上、先送りされているわけだが、タカタはこの点には言及していない。これでは世間の目に「リコールの影響は微々たるもの」と映っても不思議はない。
とはいえ、自動車メーカー相手では“この手”が通じるわけはない。好決算を発表する直前の1月29日、タカタはメーカー向け説明会で“フェイント”を仕掛けた。巨額のリコール費用負担で財務が悪化しかねないとして事業の継続性を検討する第三者委員会を設置する旨を発表したのだ。エアバッグの世界シェアで2割を占めるタカタが深刻な経営危機に陥れば各社の新車戦略に影響する。そこで企業法務や事業再生に詳しい弁護士などによる事業継続を検討する第三者委員会を旗揚げする、というのだ。
そのココロは「もしタカタが“リコール倒産”すればメーカーに飛び火する。それを念頭に立て替えたリコール費用の責任割合を決めてほしい。何ならば当社に対する債権放棄の手段もある」という延命への協力アピールに他ならない。
タカタは資産から負債を差し引いた純資産が昨年9月中間期で1400億円あるが、今後の協議次第では一気に吹き飛ぶ。それが怖いから各社の胸元に匕首を突き付けた格好なのだ。
まるでどこかの国の“瀬戸際外交”そのものである。