黒人ではない者が黒人を模して顔面を黒く塗る行為はブラックフェイスと呼ばれ、芸能の世界では長い伝統がある。日本でもことあるごとに登場してきた。
「鈴木雅之や田代まさしが在籍したことで知られるシャネルズ、ラッツ&スターは、黒人音楽の影響を強く受け、顔面を黒く塗ったブラックフェイスのパフォーマンスを繰り広げていました。本人たちは黒人文化へのリスペクトを込めての表現としていたようですが、受け取る側にとってはそうした意識はそれほどなかったように思えます」(音楽ライター)
シャネルズの結成は1975年。その後、1980年代の半ばにかけて活躍した。当時は、今ほど人権意識は高くはなかった。しかし、ラッツ&スターが2015年に、『ミュージックフェア』(フジテレビ系)でももいろクローバーZと共演時に披露した黒塗りメイクが批判を浴びている。
「番組は収録でしたが、オンエア前に出演者が写真を公開したところ、ネット上で拡散され、賛否両論を巻き起こしました。結果的に当日の放送では、黒塗りパフォーマンスのシーンは全カットとなってしまいました。広く議論が呼び起こされるのではなく、問題となりそうなものをすべて隠してしまう構造こそ危ういといえるかもしれません」(前出・同)
そもそも日本人にとって、肌の色をめぐる人種差別はなじみが薄い。そのため、こうした表現はバラエティの演出をめぐる「表現の自由」を主張する肯定派と「人権擁護」を徹底する否定派に議論が分かれがちだ。まずは差別の歴史や構造を知ることこそ重要かもしれない。