この年の11月19日、三原山は35年ぶりの大噴火に見舞われ、最終的には島民全員約1万人が船で、伊豆および東京都内に避難を開始する大規模な災害となり、テレビ局を始めとするマスコミは、全員退避となる直前まで大島町に滞在。その様子は日本全国に届けられた。
「問題の映像」が撮影されたのは、11月21日ごろ。炎が噴き出る火口を撮影しようと、フジテレビのクルーが安全な場所でカメラを回していたところ、ある一人のカメラマンが「あっ!」と声を上げた。
カメラマンはマグマを噴き上げる火口付近に、「謎の人影」を発見。その人影はマグマに飲み込まれまいと展望台へ急いでいたのだ。スタッフは救助に向かおうと思ったが、既にマグマは高い位置まで吹き上げており、救助することは不可能であった。なお、フジテレビの撮影スタッフは噴火後、この人物を探すため、焼け焦げた展望台へと向かったのだだが、人間の遺体らしきものは見つからなかった。
数日後、この「この謎の人影」の映像は、フジテレビのニュース番組やワイドショーでたびたび流れることとなり、「無事に避難することができたのだろうか」「幽霊だったのではないか」とのオカルトめいた噂も囁かれるようになった。
なお、この人物の正体だが、現在でもわかってないことも多いのだが、正体は全国の火山を撮影しているアマチュアカメラマンの某という人物だという。
当日はビニール傘を片手に火口付近へ出かけ、命からがら火口から逃げ出し、全島民避難後に、小屋に潜んでいるのを保護されており、命に別状はなかったのだという(その後、島民から大ヒンシュクを買ったのは言うまでもない)。
この映像は、昭和末期から平成初期にかけて度々放送されており、当時大きな話題になったが、なかなかに衝撃的な映像のため、最近ではほとんど放送される機会はなく、「伝説の映像」の一つと化しているようだ。
文:穂積昭雪(山口敏太郎事務所)