4イニングを投げ、被安打ゼロ、失点1(自責ゼロ)。数字だけを見れば、「好投」ということになるが、四死球4、暴投2。71球も投じる不甲斐なさだった。その後、藤浪の二軍降格が決定している。
しかし、今回の二軍落ちはこれまでとは、中身がちょっと違うようだ。
「これまでの二軍調整には『お目付け役』みたいな人がついていたんです。二軍コーチの誰かが付き、制球難克服のためのアドバイスもしてきたんですが、今回は、基本的に一人でやることになりそう」(球界関係者)
昨季までは、藤浪のお目付け役の中に矢野監督も入っていた。二軍指揮官として、彼が目指す方向などを聞いていた。また、捕手出身の指揮官としても、「藤浪の魅力はスピードボール。真っすぐ中心の投球を続けるべき」などの助言も送っていたそうだ。
今回、二軍調整の期間は無期限。完全復活するまで昇格はないという。本人が「トコトンまでやってみたい」と矢野監督に直訴したそうだが、“お一人サマ”の調整で本当に復活できるのかどうか、疑問だ。
投手出身のプロ野球解説者がこう言う。
「前回のオープン戦登板(3月2日)での藤浪は投球内容も良かった。でも、キャンプ終盤で投球フォームをスリークオーターに変えました。こんな時期にやる? 2日時点ではスリークオーターで結果を出したとか、前向きな報道がありましたが、12日の自滅は予見されていました。迷っているから、キャンプ終盤になって投球フォームを変えるんです」
それを裏付けるような証言もある。12日、中日は「全員左バッター」という変則打線で臨んでいる。中日の与田剛監督らは「藤浪対策」と言っていたが、さらに詳しく聞くと、
「だって、ぶつけられたら、大変でしょ? 開幕戦は今月の29日。こんな時期にぶつけられて怪我でもさせられたら…」
と、返ってきた。藤浪は右バッターにぶつけてしまうことが多い。“付焼き刀”の不安定な新投球フォームの巻き添えを食らったら、たまったものではないと、中日サイドは見ていたわけだ。
今後の藤浪について、こんな声も聞かれた。
「ナンヤカンヤ言っても、ドラフト1位で指名した選手。チームの看板選手である以上、無下にはできません」(在阪記者)
一部メディアにあるトレード放出は考えにくいというわけだ。
とはいえ、「お一人サマ」で投球フォームのことを考え、練習して復活できるのだろうか。まあ、二軍の他選手が練習パートナーを務めてくれるだろうが、復活までかなりの時間を要するはず。
「復活のめどがつかなければ、経営陣、編成部も『今後のこと』を考え始めると思います。ドラフト1位の看板選手を育てられないのは、球団の恥です」(前出・プロ野球解説者)
ひょっとしたら、藤浪は球団のメンツに縛られ、永遠の二軍暮らしなんてことにならないか? 藤浪の今回の二軍降格は、プロ野球人生を大きく左右するものになりそうだ。(スポーツライター・飯山満)