やはりタダものではない。前走の神戸新聞杯、オウケンブルースリは勝ったディープスカイに勝るとも劣らない強烈なインパクトを残した。
「差し脚を生かす競馬を身につけたとはいうものの、まさか最後方からになるとはね。4コーナーではとても届かないようなポジションから一気に差を詰めてくれた。どんな展開でも位置取りでも、きっちり末脚を使えることを示せたのは大きかった」と音無師は振り返った。
夏の急上昇はダテではなかった。デビューは4月と遅かったが、未勝利を勝つとそこから3連勝してみせた。特に印象的だったのは前々走の新潟・阿賀野川特別だ。見事な決め手を発揮して古馬1000万を撃破。しかも、当時の3着は後にセントライト記念を制すダイワワイルドボアだったのだから、内容の濃さがよく分かる。
3着に終わった神戸新聞杯にしても、初めての重賞挑戦。大目標はその次の菊花賞。そのあたりを踏まえて内田は最後方からどれだけ脚を使えるか、「試し乗り」をした感が強い。課題の折り合いも初の2400メートルにして、ピタリとついた。収穫は十分。夏の成長をしっかり夢へとつなげた。
中間も疲れなく順調に乗られている。15日の1週前追い切りは栗東坂路の状態がかなり悪かったため、800メートル56秒2→41秒2→13秒7と平凡な時計に終わったが、脚取りは力強かった。
「時計どうのより、あの調教はきっちり馬体を併せるのが目的だった。その意味ではいいケイコができたと思う。問題なくきているし、最終追いはサッとやるだけで十分だね」と師はうなずいた。
課題をひとつずつクリアしているブルースリには追い風も吹いている。神戸新聞杯で敗れた変則2冠馬ディープスカイが天皇賞・秋からジャパンCにローテーションを定めたのだ。それだけに期待は大きい。
「三千に不安がないわけじゃないけど、折り合いがついてうまく流れに乗れればチャンスはある」。ブルースリが福島でひっそりデビューした4月26日、皐月賞は終わっていた。遅れてきた大物が、一気に頂点を極めようとしている。