そんなハロウィンの迫るアメリカで、危険視されているものがある。ハロウィンになると風習もあってお化けに扮する人も少なくないが、特にピエロの衣装を着る怪人物に注意すべき、という話が出ているのだ。
近年アメリカでは、ピエロ姿の怪人物に遭遇し、追いかけられたり、時には襲われたりするという体験談が続出し、また動画もアップされ話題になっている。特に変わった扮装をする機会が増えるハロウィンの時期になると頻発するとして、注意喚起されているのだ。
例えば2016年9月2日にはサウスカロライナ州で、赤と黄色の派手な服を着た白塗りのピエロが目撃され、住民を怯えさせて警察が出動する事態になっている。同日にはオハイオ州コロンバスでも黒い服にピエロのマスクの人物が、通行人を追いかける事案が起こった。また、2018年10月にはペンシルバニア州で、闇の中から不気味なピエロ姿の人物が車に襲いかかる様子が目撃され、動画が話題になった。
これらの不気味なピエロ姿の人物は、とある都市伝説がモデルになっているという。「ファントム・クラウン」と呼ばれるもので、カラフルなピエロの衣装に身を包み、フレンドリーな笑顔とひょうきんな動きで子供に近づき、そのままさらって隠し持っていたナイフで殺してしまう、というものだ。話にはバリエーションがあるが、子供を狙い最終的には子供が殺されてしまうという点が一致している。
この都市伝説は古今東西問わず存在する怪談に、アメリカで有名な連続殺人犯の事件が加わったものだと考えられている。
モデルになった連続殺人犯は、普段は地元で有名な篤志家。ピエロの格好をして慈善事業も行っていた。しかし、実際は裏で多くの子供に性的暴行をはたらき、あげく殺害していたのである。彼はメディアによって「キラー・クラウン」、殺人ピエロと渾名された。この事件や、事件をモデルにした創作物から「ファントム・クラウン」の都市伝説が生まれたとみられる。
そして現在、この都市伝説は予想外の広がりを生んでいる。悪質ないたずらを行って人を怯えさせたり、逆にその一部始終を動画で撮影して、注目を集めようとアップする行為が頻発している。
現地ではハロウィンに合わせてこのような悪質ないたずらが増える可能性もあるとして、注意するよう呼び掛けられているという。ハロウィンは化け物の目をごまかすために化け物の仮装をするのだが、身も心も化け物のような人々が出てしまったということなのかもしれない。
(山口敏太郎)