しかし、この阪神の順調さは『嵐の前の静けさ』なのかもしれない。
「キャンプインまであと1週間と迫った1月25日の時点で、契約更改に至っていないプロ野球選手は3人いました。22日に金本(知憲)が契約しましたが、その3人というのは、下柳(剛)、藤川(球児)、久保(康友)。そう、全員、阪神選手ですよ」(ライバル球団職員)
昨年12月までにまとまらず、契約更改が『年越し』となった選手も数えれば、計5人。先述の4人に、選手会長の鳥谷敬内野手も加わる。「選手会長までがモメた」となれば、何か火ダネがチーム内部に燻っていると見るべきだろう。1月25日にサインした鳥谷は会見でこう語っていた。
「こっちも言いたいことがあるし、向こう(球団)もある。お金だけではなく…」
言いたいこととは何か? 鳥谷は記者団の質問をはずらかしたが、3日前、1億円のダウン提示を受け入れた金本も、意味深な物言いをしていた。
「選手は結束力を持ってまとまっていると思う。いままでとは違う姿というか…」
この金本発言の会見に立ち会ったメディア陣の1人によれば、金本は見るからに不機嫌そうな表情で雛壇に現れ、先導役の球団職員を無視するようにして腰掛けたという。しかも、冒頭で自ら「金銭的な話は特にない」と言い、約80分に及んだ契約更改交渉では、1億円のダウン提示となった年俸額以外の内容で長引いたことを打ち明けている。
主力選手たちの交渉を長引かせた『金銭面以外の内容』とは−−。
「ひと言で言えば、城島ですよ」(関係者)
昨季、右肘の故障で出遅れた“正捕手”矢野輝弘は約70%の大幅減俸を強いられた。復帰後の成績(打率3割7厘)、チーム貢献度を考えれば、「冷た過ぎる」というのが阪神ナインの総意であり、言い換えれば、「何故、城島を獲ったんだ!?」なるチーム首脳陣への疑問も沸いてくる。
藤川も契約更改後、「勝ちたい集団」とチームを評し、金本はこうも言い切っている。
「選手たちだけで優勝できるように頑張る」
1月31日、一部の主力選手が『決起集会』を開いている。発起人は金本であり、その席上には渦中の城島も招かされていた。
「城島獲得に疑問を持ったとしても、当人に文句を言うほど金本たちは愚かではありません。首脳陣への疑問、分からないことがあったら、自分のなかに仕舞い込むのではなく、オープンにして話し合っていこうみたいな集会になったと聞いていますが」
チーム関係者はキナ臭い様相を否定するが、城島が精力的にグラウンドを行き来すればするほど、虎ナインの表情が複雑になるようである。