一方、こんな見方もある。
「もしヤマダ電機の独り勝ちが続けば、家電メーカーに対するヤマダの発言力は嫌でも高まる。その分、他の量販店は不利な条件を呑まされる。結果、2位以下の量販店は体力の消耗戦にさらされます。まさに業界サバイバルです。今は3月の決算対策に汲々としていますが、新年度に入ればどうなるか、目が離せません」(証券アナリスト)
確かに家電量販店は、比較的新しい業界の割には激しいパワー力学を展開してきた歴史を持つ。現在は消滅した第一家庭電器が業界トップだったこともあれば、今や順位を大きく下げているベスト電器やコジマまた然り。その目まぐるしいトップ交替の歴史に照らせば、業界の“ガリバー”ヤマダ電機とて「生き残り戦争」の渦中に巻き込まれれば、どうなるかはわからない。
折も折、公正取引委員会は2月16日、エディオンに対し、取引上優位な立場を利用して家電メーカーの従業員を店舗に派遣させていたとして、独禁法違反(優越的地位の乱用)で排除措置命令を出し、約40億円の課徴金を納付するよう命じた。'08年9月から'10年11月にかけて、関東地方で展開する「イシマル」や中部地方の「エイデン」、近畿の「ミドリ」、中四国と九州の「デオデオ」などグループ傘下の延べ133店舗で、新規オープンや改装時に家電メーカーや販売会社の従業員延べ約1万1000人を派遣させ、無報酬で商品搬入や陳列などをさせていたもので、優越的地位の乱用が課徴金の対象となってからは過去最高額だった。
実はヤマダ電機も同様の独禁法違反に問われ'08年6月に排除措置命令を受けている。すなわち、エディオンはヤマダの摘発直後に「家電メーカーを手足のように使って何が悪い」と大暴走したのである。
業界筋がこう喝破する。
「今回、エディオンが公取委からお灸を据えられたことで各社は表向きシュンとなっていますが、実際はトンデモない。どうすれば公取委の目を逃れて美味しい汁を吸えるかに知恵を絞っている。公取委もそんなことは先刻承知しており、家電メーカーから本音を引き出すことで量販店を締め上げようと躍起になっている。3月期末の決算対策でボロを出せば、それこそ『待ってました』です」
公取委の目が以前にも増して光っている中、量販店各社は、果たして生き残る術を見いだせるのだろうか。