曺国氏は辞任の理由として「検察改革の道筋を付けた」「家族をめぐる疑惑についてこれ以上、文在寅大統領や政府に負担をかけられない」ことを挙げている。
「青瓦台(大統領府)の関係者はあくまでも『曺国氏が自ら辞任を決定した』と強調しましたが、辞任の背景には、文政権が世論調査の結果に危機感を抱いたことが明白です」(韓国ウオッチャー)
文大統領の支持率は、9月9日に曺国氏を法相任命後から下落し続け、10月14日に発表された文政権寄りと言われている調査会社「リアルメーター」でさえ、大統領選挙の際の得票率(41.1%)に近い41.4%という調査結果が出ている。
「韓国では支持率が40%を割ると、レームダック(死に体)化の始まりと言われていますからね。曺国氏の辞任は文政権にとって大打撃ですが、さすがに無視できなくなったのでしょう」(同)
一方、ある国際ジャーナリストは曺国氏の辞任の背景に「反文在寅デモがある」と分析する。
どういう事か。9月28日にソウル市内で行われた文大統領支持派による「曺国守護デモ」は、主催者発表80万、マスコミ試算10万人だった。
「これに対し10月3日にソウル光化門広場で行われた『曺国法相の退任』を求める反文在寅デモでは、主催者発表で200万人、警察推計で50万人となった。朴槿恵前大統領弾劾の際の『ローソク集会デモ』以来の大規模デモであり、韓国史上最大だったとも言われています。このまま曺国氏が辞任しなければ彼らの声を抑えることができず、“祖国内戦”が勃発していたかもしれません」(同)
曺国氏の辞任が功を奏したのか、「リアルメーター」が14日から16日の間に約1500人の有権者を対象に行った世論調査では、文大統領に対する支持率は前回よりも4.1%アップし、45.5%に達した。
「ただ、20代に関しては辞任後もさらに支持率を減らしています。内戦の火種はまだくすぶっているようです」(同)
そもそも、今の若者たちは、文大統領を支持していたメイン層である。
「2017年の大統領選挙で文氏は、選挙公約に『公共部門に81万人の雇用創出』、『民間にも要請して50万人の雇用創出』、『最低賃金1万ウォン(約1000円)』といった雇用対策を前面に掲げました。それが若者から圧倒的な支持を受け、大統領に当選しています」(在日韓国人ライター)
ところが、文大統領は任期中に「最低時給1万ウォン」に上げる公約を事実上撤回。さらに反日政策を積極的に進め、むしろ若者を苦しめている。
「今年9月にソウルで開催される予定だった日本企業の就職説明会が文政権の意向で中止になりました。理由は『日韓関係がギクシャクしているのに、韓国政府が日本企業を就職博覧会に招くのは体裁が悪い』というものだったのです。文大統領の反日政策は、事実上若者の雇用機会を潰してしまっているのです」(同)
しかも、韓国政府は若者を欺こうとしている。
「政府が公表した8月の失業率は3%となり、前年同月比で1%も改善したのですが、その内訳を見ると増加した雇用の86%が高齢者で、政府が雇ったものだったのです。つまり、政府による“ドーピング”です。それが国民にバレ、逆に怒りを増幅させてしまったのです」(同)
加えて、不正疑惑が相次ぐ曺国氏の法相任命を文大統領は強行した。朴槿恵前大統領を弾劾した若者たちは、政権交代による政治のクリーン化を求めていたが、蓋を開けてみれば不正だらけで、何も変わっていなかった。
「裏切られた若者たちは、二度と文大統領を支持することはない。むしろ曺国氏を辞任に追いやったことで“打倒文政権”が加速しそうな気配です」(元ソウル特派員)
若者たちの怒りを止めることはできそうにない上に、他にも文政権を打倒しようとする勢力がある。
「文政権が日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄を決めたことで、韓国軍の中でも文大統領に対して不信感が高まっています。そもそも、GSOMIAで最大の軍事的恩恵を受けているのは韓国でした。破棄することは、北朝鮮に利益を供する以外のなにものでもありません」(軍事アナリスト)
米有力紙ワシントン・ポストやニューヨーク・タイムスも、GSOMIA破棄を「最大の敗者は韓国で、最大の勝者は北朝鮮だ」と皮肉っている。
「多くの軍人は、自国の安全保障を捨ててまで『北朝鮮にすり寄った』と失望しています。正義感の強い一部の軍人たちが、水面下でクーデターを仕掛ける準備をしているという噂もあるほどです」(同)
今にも内戦が勃発しそうな韓国だが、文大統領の任期は2022年5月まで。まだ2年以上残っている。
「文大統領が自らの生き残りをかけて北朝鮮との融和を強行すれば、軍の反対勢力は即行動に移すでしょう」(同)
若者の反発、軍人のクーデター…。もはや祖国内戦は避けられないかもしれない。