「首相は石破派を除く党内のほぼ全派閥の支持を得て、国会議員の7割を押さえ圧勝の気配。出馬が取り沙汰された岸田文雄氏は断念、野田聖子氏も情報公開請求の漏えい問題でコケた。竹下派は重鎮の青木幹雄元参院議員会長の影響により一部が石破支持にまわるとはいえ、衆院議員を中心に安倍支持。そのため勝敗というよりも、石破氏がどこまで善戦し次につなげられるのかが注目ですが、首相が盤石であることは間違いありません」(政治部記者)
しかし、そうした情勢にもかかわらず、つい最近まで安倍首相の表情は冴えなかったという。
「来年は統一地方選と参院選が待っている。自民党としては、それらに安倍首相で勝てるのかが最重要課題です。そうした中、加計・森友学園疑惑を払拭できていない現政権では国民の不信で負ける可能性が大きいという不安と不満が、参院議員、地方議員に蔓延している。さらに問題なのが、党内で注目度の高い小泉進次郎氏の存在。もし進次郎氏が石破支持となった場合、地方から永田町へ雪崩を打って石破氏に流れが傾く。そうした懸念があったのでしょう」(同)
しかし、出馬宣言した際の安倍首相は、一変、力強さがみなぎっていたが、何が自信を持たせたのか。
「8月22日、首相はトランプ米大統領と電話会談をし、今後の北朝鮮情勢について話している。9月25日からニューヨークで国連総会の一般討論演説が始まるが、電話で首相は、トランプ大統領との首脳会談についても言及したといいます。つまり、すでに3選を確信しているわけで、ポイントはその前、夏休み中のゴルフと言われているのです」(同)
安倍首相は8月15日から22日まで山梨県鳴沢村の別荘で夏休みをすごしたが、16日に富士河口湖町で、森喜朗元首相、麻生太郎財務相、そして小泉純一郎元首相などとゴルフをしている。
「小泉氏に関しては、総裁選が近づくにつれ原発を推進する安倍首相への批判を強めていたことから、自民党内でも意外との声が出た」(自民党関係者)
しかもゴルフ前夜には、そのメンバーで4時間にわたり会食をしており、そこでの話が安倍首相に強い自信を持たせたという。
別の自民党関係者の話。
「首相は小泉氏に、進次郎氏の総裁選への振る舞いを何とかならないか、と切り出し、小泉氏が了解したと囁かれている。要は、このやり取りが、進次郎が石破氏を積極的に支援や応援をしない、さらには自ら動かないという確約だったのではないか。しかも、そこには見返りとして進次郎氏の入閣話があったとされる。首相は進次郎氏が農林部会長を務め農業改革に強い意欲を持っていたことを考え、まずは農水相で、と持ち掛けたとの情報もある」
これが事実であれば、石破陣営が淡い期待を抱いた進次郎氏支援はジ・エンドとなり、安倍圧勝の流れとなる。しかし、これには石破氏を支援する竹下派幹部がこう言い放つ。
「確約? 単に安倍さんが思い込んでいるだけではないのか。父親がその場でウンウンとあしらっただけだろう。万が一、その話が通ったとしても、安倍さんは自分で自分の首を絞めることになる。それこそ石破さんの出番になりますよ」
安倍政権が今、かろうじて支持されている要因は経済面での安定とされているが、3選後は対米関係で追い詰められる可能性が高いという。
「国連総会に絡めた首脳会談でトランプ氏に求められるのは、11月の中間選挙対策への手土産です。おそらく、日本の自動車輸出を中心とした対米黒字の縮小を強く迫られる。トランプ氏が公言している通り、自動車で追加関税が25%に引き上げられるようなことがあれば、日本経済がグラつきかねない」(経済部記者)
その代わりに差し出すのが、今、農産物の分野とされている。
「米国の牛肉やコメ、豚肉、乳製品などの輸入拡大が予想される。進次郎氏は農林部会長時代に組織を含めた農業改革をやろうとして、農協や族議員の抵抗を受け挫折している。入閣で再び農水相となれば、今度こそ大ナタを振り、大幅な緩和に踏み切るだろう。結果、農協票の1000万票は“反安倍”一色になることは間違いない」(前出・竹下派幹部)
これに経済不安が追い打ちをかけ参院選でのボロ負けが見えれば、自民党はバラバラになる――。安倍首相の目先の3選対策がアダとなるという見立てだ。
「ただでさえ安倍首相の3選が決まった段階でレームダック化が加速する。岸田派や細田派の中にもいる隠れ石破派や進次郎派が、すでにその際の担ぎ上げを模索している中、首相の入閣手形は、そうした動きをさらに早める。となると、参院選までもたない可能性も出てくるだろう」(自民党重鎮)
3選直後から、またもや安倍首相の不安が募りそうだ。