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アベノミクス実像と虚像 おやじ世代の転職事情最前線!(3)

 おやじ世代には聞き慣れない転職エージェントという“職種”が台頭している理由の一つに、その成功報酬の高さがある。一般的に転職エージェントは、求職者が転職先を決め入社すると、報酬が企業側から支払われるが、その額は何と転職者額面年収の3〜4割と莫大な額になるという。つまり、年収1000万円で転職を成功させれば300万円以上の報酬となるのだ。
 「年間3〜4人の転職を成功させれば、普通に生活していくことができます」と、個人の転職エージェントとして活動するB氏が言う。
 「転職を希望している方は、われわれエージェントとやり取りをしていくにつれ、ご自身が“モノ”として扱われていることに気付くでしょう」(同)

 某大手求人サポート企業の求職者に対するPRに「各業界に精通した専任のキャリアアドバイザーが、転職活動のご相談や求人のご紹介をさせていただきます」とある。しかし、現実はかなり違うようだ。
 この大手エージェントに勤務経験のあるC氏が言う。
 「ウチは1人あたり80〜120名の求職者を担当します。なので、企業と求職者の日程調整、合否連絡を行っているだけで1日が過ぎてしまう。求職者のことを考えて最良の転職先を一緒に探すということは、時間的に不可能です。時間が足りないので、転職の可能性の高い求職者(報酬を受け取ることのできる可能性が高い人)を優先的にフォローしますから、それ以外と見なした求職者への対応は悪くなって当然ですよ」

 先のB氏が言った「モノとして扱う」とは、このこと。求職者という商材の“物流業”を営んでいるということなのだ。スペシャリストを除けば、ただの商材であるから個性というものは必要ない。背景もあまり関係ない。個人を理解する必要もない−−。重要視するのは「学歴」「職歴」「年齢」の3スペックのみ。「早稲田大学を出て、新卒で大手商社に入社し、5年の経験があるからX社は受かるかもしれませんよ」といった具合である。その程度のアドバイスでも、転職さえ成功させれば“年収の3割”が転がり込むのだ。
 「内定が1社出た段階でエージェントは、その企業への入社を強く勧めてきました。私は他社も併せて検討したかったのですが」と、転職エージェントを利用して転職したN氏は言う。

 内定が出て以降、毎日のようにエージェントから送られてきた求人紹介メールや状況確認の電話が、ピタリと来なくなった。
 「ここまで露骨とは」とN氏は驚きを隠せない。とはいえ、N氏は選択肢が他にあるわけでもなく、その内定が出た企業へ入社。転職エージェントにはN氏の年収の3割が支払われた。まさに転職エージェントの仕事=“物流業”といわれるゆえんである。

 求職者は弱者だ。特におやじ世代ともなれば、子供もいるし家のローンも組んでいる、そういうケースが多い。自身がモノ扱いされ不愉快な思いをしようとも、エージェントの言いなりになるしか選択の余地がない。
 こうした“アベノミクスの虚像”ともいうべき現実を知った上で「それでも転職!」というおやじ世代には、精いっぱいのエールを送りたい。

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