最初は学校や職場の友人や知人関係からの“誘い”がきっかけだ。実際に出会った後、投資やビジネスのもうけ話を持ち掛けられるという。国民生活センターが発表したデータによると、昨年度、消費者センターに寄せられたマルチ商法に関する相談は1万526件。この内の半数が『モノなしマルチ商法』だという。
「主に30歳以下の若者の間に被害が広まっています。最初は知り合いや先輩などから『久しぶり!』と誘いのメールや電話があります。実際に会ってみると、ただの飲み会ではなく、不動産投資などの話を持ち掛けられるというわけです。相手を目の前にすると、気の弱い人などは強引に押し切られてしまうようですね。断ることで今後の人間関係を悪くしたくないという心理が働いて、気が付いたら契約してしまうケースが多く見られます」(消費アドバイザー)
Hさん(27歳)は、ある日、大学時代の先輩の友達という人物からラインがあったという。学生時代に何度か一緒に旅行に行ったことがあるそうで、軽い気持ちで会ったことから被害に遭ってしまった。
「昔、電話番号を交換していたので、そこからラインが来ました。『久しぶりに会おう。いい話があるんだよ』と言われ、何のことか分からないまま、軽い気持ちで会ってしまったのが、今思えば失敗でした。相手はしばらく昔の思い出話をすると、おもむろに『仮想通貨、知ってるよね?』と投資話を持ち掛けてきました。よくよく聞いてみると、何かの投資をすると仮想通貨で配当がもらえるといったような話でした。もともと自分は優柔不断で、誘われると断れない性格なんです。相手もそれを分かっていて連絡してきたんでしょうね。結局、相手との人間関係を悪くしたくない一心で、50万円ほど渡してしまったのです。もちろん、もうけなんてありませんよ。今思い出しても頭にきますが、いい社会勉強だと思って忘れるしかありません…」
こう悔しい胸の内を明かしてくれた。
知人や友人という人間関係を巧みに利用した『モノなしマルチ商法』。もし自分が誘われたら、きっぱりと断る勇気を持つことが重要だ。また、相手に強く押されて契約してしまった場合でも、クーリングオフが可能な場合もある。悩んでいる方は消費者ホットライン『188』に電話をし、相談してみるといいだろう。