証券アナリストは「ここにきて大手の中でもジリ貧が際立つキリンの焦りはハンパじゃない。だからこそプライドをかなぐり捨て、ヤッホーとの提携にかじを切った」と指摘する。
ヤッホー関係者によると、同社は大手各社に提携を持ち掛けた。その際「パクッと飛びつき、トントン拍子で話がまとまったのがキリンだった」という。これには伏線がある。
今年の7月、キリンは来年春からクラフトビール事業に参入すると発表した。醸造所を併設した飲食店を東京の代官山と横浜工場に開店し、若者らの需要を喚起することで、東京五輪が開催される2020年には売上高200億円を目指す計画。その狙いは「多彩なビール投入による市場の活性化」(磯崎功典社長)だ。
要するに伝統的なビールでは市場が開けない、だからさまざまな味わいが楽しめるクラフトビールに参入し、ライバルを一気に出し抜く作戦である。そこへヤッホーから思いがけない商談がきたというわけだ。
「クラフトビールの知名度が全国区になり、市場拡大に直結すればキリンはやっとジリ貧地獄から脱却できる。磯崎社長の口が滑らかになるのも無理はありません」(前出アナリスト)
ビール業界には“ゾロゾロ品”ですぐに他社が追随する伝統がある。そのデンで行けば、キリンの新戦略も怪しい限りだが…。