「報道陣は31社約200人、球団によれば、約300人が彼の入寮を見届けたそうです。警備員の人数も通常の3倍に増やしていました。入寮日にファンが殺到したのは、斎藤佑樹の2011年1月以来。当時は女性ファンが多かったように記憶していますが、今回はコアな野球好きの年長者が目立ちました」(取材記者)
そんな清宮フィーバーの裏で、球団は2つの重大事項に振りまわされていた。一つは大谷翔平(23)の獲得に成功した大リーグ・エンゼルスのビリー・エプラーGMが来日したこと。同GMが勇翔寮に隣接された球団施設を訪ね、大谷に関するデータの提供を求めてきた。その対応に追われたわけだが、それ以上に厄介だったのが『スカウト会議』だ。清宮の入寮した勇翔寮内で今秋のドラフト候補に関する話し合いを行っていた。
「この時期、どの球団も年始めのスカウト会議を開きます。球団によって1月期作成のリストに掲載された候補者の人数は異なりますが、だいだい、100人強がリスト入りされます。そこから秋のドラフト本番に向け、絞り込まれていきます」(在京球団スカウト)
関係者によれば、この日のスカウト会議は例年以上に時間を費やしたという。理由は簡単だ。「第二の清宮」がいないからである。
「今年のドラフトは各球団で1位候補が割れるか、別の意味で特定の選手に集中する可能性があります。『これだ!』というスター選手がいないんです」(前出・同)
見方を変えれば、各球団スカウトの眼力が試される年となりそうだ。今回の清宮指名もそうだが、日ハムはその年の注目選手の指名に成功してきたので、スカウト陣はヘンなプレッシャーも感じている。その影響だろう。早くもこんな“失態”が見られた。
「現時点で大学ナンバー1捕手と評されているのが、上武大学の吉田高彰君です。同校の練習始めに日ハムのスカウトの姿は見られませんでした。昨年オフ、好捕手の大野奨太(30)を失っています。FAで中日に移籍してしまい、その穴を埋める補強は、かつてFAで退団した鶴岡慎也を呼び戻し、巨人を解雇された元日ハム捕手の實松一成を獲っただけ。ベテランを呼び戻したということは、今年のドラフトで捕手を獲る予定があるからでしょう」(ベテラン記者)
1位指名は入札抽選となり、クジ運次第のところもあるが、しっかりとコネを付けておかなければ、家庭環境など詳細な調査はできない。ドラフトにおける日ハムの補強ポイントは捕手と投手。「将来のエース候補の獲得も急務。リリーフタイプの投手も必要」(関係者)との情報も交錯しており、日ハムスカウト陣は「捕手、投手、エース候補、リリーフタイプ」で迷い、どの選手を集中的に追いかけるべきか、まだ決めかねているようだ。
「左腕ではないが、倉敷商(岡山県)の引地秀一郎投手が人気かも。倉敷商は故・星野仙一氏の母校なので、付加価値のようなものが付くと思います。埼玉栄の米倉貫太投手はエースの風格がある。同校の監督は東北高校でダルビッシュを指導した若生監督ですよ。埼玉のダルビッシュと言われ始めています」(前出・在京球団スカウト)
昨年の年始めのスカウト会議は、短時間で終了した。清宮という目玉選手がいたからで、日ハムの「その年のナンバー1選手を追う」の方針にも合致していたからだ。ナンバー1を決められない事情はともかく、清宮がこんな入寮日の舞台裏を知ったら、プロ入りのモチベーションも下がってしまいそうだ。