春場所千秋楽、鶴竜を右下手投げで破り、42回目の優勝を全勝で飾った横綱白鵬(34)。その際、白鵬も土俵下まで転げ落ち、右腕の付け根あたりを押さえて顔を大きく歪めた。その姿を、2年前の稀勢の里とダブらせ、不吉な思いに駆られたファンも多かったのではないだろうか。
表彰式では重い賜杯や優勝旗を白鵬1人では受け取れず、土俵下にいた朝日山審判委員(元関脇琴錦)らの手を借りた。その様子を見た宮城野部屋関係者の顔面は蒼白だった。
「これが命取りにならなければいいが…」
後日、右上腕部の筋肉の一部が断裂していることを明かした上で、次のように説明した。
「突っ張りや、まわしを引き付ける動作にはあまり影響ないが、力を入れて力こぶを作るように腕を曲げ、上腕二頭筋を収縮させると違和感がある」
つまり、相撲を取る上で大いに支障があるということだ。手術も考えたというが、それでは回復に時間がかかると断念。とりあえず安静にして様子を見ることにしたという。
千秋楽翌日の一夜明け会見では、コップの水さえ右手では飲めない状態で、「なんとなく稀勢の里の気持ちが分かる」と、ため息をついていた。
3月31日から始まった春巡業には参加しているものの、取組には加わらず、横綱土俵入りだけを行っている。春巡業が関東に近づく今月中盤には、かかりつけの病院で精密検査を受け、場合によっては再生医療を試みる可能性も示唆した。
右と左の違いはあるが、同じ上腕を負傷した稀勢の里が、復帰を急ぐあまり治療に失敗したのは記憶に新しい。その後、稀勢の里は引退に追い込まれているだけに、白鵬が慎重の上にも慎重を期すのは間違いない。
「白鵬にすれば、むしろ、もっけの幸いじゃないですか。今回の優勝が3場所ぶり、その前が5場所ぶりということでも分かるように、年齢的、肉体的に、もう無理はできません。本人は『令和最初の場所も優勝でスタート』と言っていますが、これで胸を張って休める理由ができました。それも1場所だけじゃなく、数場所続けて」(担当記者)
平成最後を全勝優勝で飾った大横綱・白鵬だが、右腕負傷の重篤さが囁かれる中、令和の土俵上にその姿が見られるかどうか、微妙なところにきている。