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洋服ダンスを抜けると…

 イギリスやフランス辺りのお城のような邸宅を訪ねた子供が、かくれんぼか何かで洋服ダンスを開くと、中にはおとぎの国が広がっていて…。そんなファンタジーがあったような。7歳のイギリス人少女キャロン・ウォールが洋服ダンスに見た世界は、ファンタジーのかけらも無く、呆れるほど現実的だった。

 1967年8月21日。イギリスのドーセットシャーのウォール家では、一人娘キャロンの7歳の誕生日パーティーが開かれていた。主役のキャロンは嬉しくてしょうがない。そこへ、母親からフランス人形とパールの指輪をプレゼントされたものだから、キャロンのはしゃぎようは最高潮に達し、テーブルに置いてあったぶどう酒の入ったグラスをひっくり返してしまった。グラスから飛び出したぶどう酒は、キャロンが着ていた白いレースのドレスを赤く汚してしまった。汚れたドレスを着がえようとキャロンが洋服ダンスを開いた時、その場にいた人たちは驚愕の声を上げた。洋服ダンスの中には、あるべきはずの服は無く、代わりに古びたビルの光景があった。そして、全員が注目する中、キャロンは洋服ダンスの中へと引き込まれるように消えてしまった。

 一方、北大西洋を隔てたカナダのトロントではこの日、古くなったビルを解体するため、作業員たちがある現場に来ていた。そして、ビルの一室のドアを開くと同時に少女が飛び出してきた。既に使われなくなったビルである。迷子か行方不明、否、事件かもしれない。作業員達は警察に連絡した。警察が少女に身元を尋ねたところ、名前はキャロン・ウォール、イギリスのドーセットシャー在住とわかった。すぐさま国際電話でウォール家に問い合わせると、少女がフランス人形とパールの指輪を持っていて、ぶどう酒で赤く汚れた白いレースのドレスを着ていたことから、イギリスで洋服ダンスの中へと消えてしまった、キャロン・ウォール本人と確認された。
 事件はイギリスのBBCテレビで放送され大反響を巻き起こした。

七海かりん(山口敏太郎事務所)

山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」
http://blog.goo.ne.jp/youkaiou/

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