「すぐ壊れる」と言うが、今は亡き“破壊王”ことプロレスラーの橋本真也さんばりに怪力なわけない。ただ、壊したストップウォッチの数と、地方503勝、中央3勝、重賞制覇26回の数字は、今年の流行語に反して“そんなの関係大あり!!”だ。
岡林厩舎ではスパルタトレーニングが基本だが、この方針を確立させるきっかけになったのが、厩舎に重賞初勝利(2000年、グランドチャンピオン2000)をもたらしたマキバスナイパーや、アローセプテンバーの存在だった。
「追い切りじゃなくても普段から間違いかと思うような(速い)タイムで走っていたからね。それまで(強い調教を課すと)馬がかわいそうという思いもあったが、強い馬をつくるにはある程度ビシッとやっていいと分かったよ」
もちろん、ハード調教を課すには管理馬がそれに耐えうる状態であることが大前提だ。ストップウォッチはその大前提…すなわち日ごろから管理馬の「調子のバロメータ=ラップ」を計る大切な道具として、師の手の中に常にある。もっとも、これは岡林師だけに限らず全国のトレーナーに共通することだが、とくに岡林師は綿密に記録を取っている調教師の一人といえる。だから、ストップウォッチの使用頻度も当然増し、寿命を著しく縮めてしまうのだ。
1988年開業、地方通算100勝を達成したのが98年。重賞初制覇以降は勝利数が飛躍的に伸びていく。その理由は馬房数が大幅に増えたことだけでなく、工夫の積み重ねが実を結んだことはいうまでもない。
「目標は馬房数の倍勝つこと。そして一番重要なのは新馬戦」の言葉通り、07年は18日現在で52勝、新馬戦は<5221>の良績を誇る。「ラップは体調のバロメーター」。師のストップウォッチが壊れるたびに、厩舎に強者の蹄音が響く。