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キャバ嬢が生まれる瞬間(16)〜ショップ店員からキャバ嬢になった女〜

 赤西あずみ(24歳・仮名)

 私は大学を卒業した後、某ブランドのショップ店員として働いていた。正社員になれたわけだし、できるだけがんばっていこうと思ってたんだけど、正直かなりキツかったね。まずサービス業だから世間が休日の時は、お店に出なくちゃいけない。友達とも休みが合わないし、自分が休みの日はただ1人寂しく過ごすだけ。

 そしてお昼も最悪だった。いつも上司とランチに行くことが決まっていたから。そこでの話題はいかに私の売り上げが低いかという内容で、説教を永遠とされる。そのうち食欲もなくなってきて、帰ってからも睡眠薬が手放せなくなった。

 もちろん有給すらとれなくて、シフトの変更を希望したら嫌味を言われるほど。たいして高くもない給料で、なぜここまでの思いをしなきゃいけないんだろうって思ったね。ただ接客業は大好きだった。知らない人と会話して、言葉のキャッチボールをするのがとても楽しい。

 色々キツいけど、せっかく就職できたし、保険や年金も払っていかなくちゃいけない。辞めたらきっと親にも心配かけてしまう。だからもう少しだけがんばろう…って思ってたのにそんな気持ちは1年と続かなかった。土日出勤で毎日12時間以上働いても残業代なし。売り上げが悪いと上司だけじゃなく本部からもわざわざ電話がかかってきて怒られる日々。それが続くと私は店の前に行くだけで吐き気がしてくるようになってしまった。

 同僚には凄く性格の良い子もいたし、ほかの人はがんばってるんだから、私もちゃんとやらなきゃと何度も思ったけど、さすがに無理だと思った。そこから同じ接客業ならもう少し楽しそうで、お金がもらえるキャバクラをやったほうがいいって考えるようになったわけ。たしかに私は社会不適合者かもしれない。でもあのまま働いてたら、精神的にもおかしくなって自分が自分じゃなくなってたと思うんだよね。

 キャバクラ嬢になった今は、ショップ店員の時と比べればもすごく精神的に楽。世間から見れば夜の仕事よりも、昼のショップ店員の方がまっとうに見えるかもしれない。でもキャバで出会う色々な人の話を聞かせてもらって、仕事だけがすべてじゃないってことがわかった。生きていくためには、もちろん働くことは大切。でも私達はなにか一つのことに縛られるために生きてるわけじゃない。もっと別の世界に目を向けてみたっていいよね。だから私は、まだ一部しか知らないキャバクラの世界で、これから人生経験を積んでいこうと思ってる。

(取材/構成・篠田エレナ)

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