だが、心霊スポットで“お持ち帰り”するハメになった場合でも、昔の人は強かった!? 怪異心霊に遭った後に、正面からぶつかって退治してしまうというケースも多く残っているのだ。
そんな『お江戸の心霊騒動』をつぶさに書き記した絵巻が存在する。その名も『稲生物怪録(いのうもののけろく)』。江戸時代中期に今で言う広島県に住んでいた藩士、稲生武太夫の体験した一か月にわたる妖怪たちとのバトルを書いた体験記である。
稲生武太夫が16歳の時、親しい友人等と百物語の後に「触ると物の怪が憑く」という古墳のある山に肝試しに行った。その時は何も出なかったのだが、やがて怪異が身の回りで起こるようになる。7月1日に毛むくじゃらでひとつ目の大男に襲われたことを皮切りに、逆さまになって飛ぶ女の首、壁に現れた大きな顔や今で言うポルターガイスト現象などを経験するが、武太夫は全く怖がらない。そして7月30日に怪異の主、“妖怪の頭領”山ン本五郎左衛門が現れて、一か月間怪異にひるまなかった武太夫の勇気をたたえ、木槌を与えて去るのである。
一見空想かとも思える話であるが、稲生武太夫の子孫は今も広島市に在住しており、『稲生物怪録』原本も当家に伝わっているという。また話に出てきた山ン本五郎左衛門の木槌は広島市の国前寺に現存し、稲生武太夫を祭神として祀る稲生神社も存在する。気になる方は、お参りに行ってみるのも良いのではないだろうか。