負けてなお強しの内容だった。小回りの札幌コース。切れ味が身上のブエナには不利に思えたが、ラストは上がり3F35秒1とメンバー最速の末脚を披露。春先と変わらぬ豪脚を発揮し、鋭く勝ち馬に迫った。しかし、陣営が下した決断は勇気ある撤退だった。
凱旋門賞断念を決めた理由はもうひとつある。馬体重だ。この日は8キロ増の454キロ。これは今春の桜花賞時と同じ数字で陣営にしてみれば、オークスから休養に入っていた分、成長がほしかったのも事実。これも海外進出を後ろ向きにさせる要因となった。
松田博師は「あれで十分やろと思ったけどな。勝ちに等しい内容やったし…」とレースぶり自体は高く評価しながらも、「きょうで8キロ増、やっぱりそのあたりなんやろな」とオーナーの心境を代弁した。
「来年? それはないやろ。3歳牝馬だからこそ挑戦しようと思ったんやろうから」。何よりも凱旋門賞に魅力を感じていたのは、軽量で臨める点にあった。事実、昨年優勝したザルカヴァをはじめ、凱旋門賞は3歳馬が古馬を打ち負かすケースは珍しくない。しかし、きょうは52キロでも差し届かなかった。もっとも、海外のビッグレースは凱旋門賞だけではない。ドバイや香港も含め、選択肢は無数にある。「ほかのレース? それはあるかもしれへんけどな」。トレーナーは希望を捨てず、一からの出直しを誓った。
今後は国内に専念。まずは秋華賞(GI、京都芝2000メートル、10月18日)で2003年のスティルインラブ以来、史上3頭目の牝馬3冠を目指す。