“野村本”は今年に入ってすでに5冊が相次いで発売されている。3月に発売された「野村の『眼』」は現在までに15万部の売り上げ。5月に発売された「エースの品格」に至っては、発売からわずか4日で重版が決定し、現在までに7万5000部を売り上げるベストセラーとなっている。
野村本の人気について「野村の『眼』」の出版元、KKベストセラーズの編集者は「特に30代後半から50代、管理職クラスのビジネスマンが購入しているようです。人を見抜く力、組織などの再生論、若手育成論などが支持されている」と分析する。
また「エースの品格」を出している小学館の編集者も「野球界で実績のある監督の言葉なので重みがある。人づくり、組織づくりのバイブルになっているのでは」。ビジネスマンを中心に、にわかに“野村ブーム”が起こり始めているという。
万年Bクラスだったヤクルトに「ID野球」を浸透させて4度のリーグ優勝、2度の日本一に導いた指導力と統率力が、ビジネスマンを中心に多くの人々の心を捉えた結果、著書の大ヒットに結びついた。いまや野村監督は迷えるビジネスマンたちのカリスマとなりつつある。
本の売れ行きとともに野村監督率いる楽天の今季の成績も好調だ。現在、楽天は3位ソフトバンクと1ゲーム差のパ・リーグ4位につけている。交流戦では12勝9敗、巨人と並ぶ4位。34勝32敗で球団設立以来、初となるAクラス入りも見えてきている。
野村監督は今季限りで3年契約を満了する。球界関係者の間では「何より契約金が高い。楽天は財布のヒモがキツイと聞くし、チームも形になり始めてるだけに、続投は考えにくいのではないか」(スポーツ紙の野球担当記者)という見方が強い。球界では後任として現在楽天の4番を担う山崎武の兼任監督というウワサまで出始めている。
また、野村監督自身には低迷する横浜の監督就任という声も漏れ聞こえてきた。6日の横浜戦で「次の監督をやるか」と何気なく出した言葉を契機に、早くも一部報道で来季の横浜監督就任が濃厚と報じられている。
しかし、ここにきて著書の人気によって楽天監督続投という話も浮上してきた。その背景にも、著書の好評ぶりがあるという。
別のスポーツ紙野球担当記者が語る。「やはり人気面が大きい。本も売れていて、野村ブームが起きているのは確か。これを無視するのは難しいでしょう。話題性、集客力の面を考えれば、続投という考え方が楽天の内部で出てきても不思議はない」
著書のヒットでカリスマ性を深めた野村監督は、来季も楽天のユニホームを着るのか、それとも別の選択肢を選ぶのか、今後の動きに注目だ。