「一日に何度も携帯電話で天気のサイトを見た。しかも、いろいろな種類をね。降水確率が60%になった時は本当についていないと思った」
梅雨の真っ只中に行われる春のグランプリ。しかも、3年連続で稍重、重が続いたとなれば、池江寿調教師がそう心配するのも無理はなかった。それが、今年は久しぶりのパンパンの良馬場。天の神様はドリームジャーニーに味方した。
さらに幸運が続く。いつものスタートの悪さが功を奏し、ディープスカイ、サクラメガワンダー、アルナスラインのライバルを直後で見渡せるポジションをゲット。メガワンダーの福永騎手が「(池添)謙一はディープを見て折り合いをつけるだけ」とうらやむほどの絶好位だった。
メガワンダーが4角手前で動き出すと、池添=ドリームもギアチェンジ。抜群の手応えで直線を迎え、ディープをアッという間に交わす。あとは持ち味の回転の速いフットワークで後続を突き放すだけ。終わってみれば、メガワンダーに1馬身以上をつける完勝だった。
池添騎手は「前を見たらサクラ、ディープ、アルナスが見えたのでしっかりとマークした。直線で抜け出した後は気を抜いていたぐらいだからね。今日は本当に強かった」と感心しきり。
天気、展開に、ディープの不可解な走り、現役最強馬ウオッカ不在という設定にも恵まれた。そして、極めつきのラッキーパンチは前走の天皇賞・春を使ったことだった。池江寿調教師が「大阪杯の後は金鯱賞を使う予定だったが、池添のアドバイスで春天を使った。三二で折り合いに苦労したおかげで、しっかりと折り合えた」と言えば、ジョッキーも「今の状態だったら、距離がもつと思っていたので。それにしても、今日は折り合いがホントに楽だった」としてやったりの表情だ。
とはいえ、運も実力のうち。完全復活した小兵が今秋に目指すのは天皇賞・秋制覇、そして、親子2代の香港GI制覇。この勝利で今後の視界が大きく開けたことは間違いない。