久しぶりにR嬢(20)からメールが来た。なぜ、久しぶりにくれたのだろうか。R嬢は、新宿・歌舞伎町のガールズバーで出会った。もう1年以上も前になる。仲良くなった私たちは、お店が終わって食事をしたり、男女兼用のサウナに行ったりもした。
ある日、そのR嬢と、アニメ「エヴァンゲリオン」の話になった。ちょうど、「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」を私が見た時期だった。R嬢は、エヴァンゲリオンを知らなかった。そのため、2人で、インターネットカフェで「エヴァンゲリオン」のテレビ版を見に行った。
ある程度のストーリーを説明した後、最初の数話を見せてあげようとしたら、貸し出し中で、その場には、いわゆる「最終2話」(25話と26話)しかなかった。
仕方がないで、「最終2話」を見ることになった。この「最終2話」は、エヴァンゲリオンファンならば、知っている話題となったストーリーだ。この「最終2話」の別の終わり方を示すために、劇場版がつくられた曰く付きの「2話」だった。
ここだけ見ても、エヴァンゲリオンのストーリーはまったく分からない。でも、ちょっと私の解説を挟みながら、2人で見ていた。R嬢の感想は「面白そう」というものだった。意外な反応だったものの、しばらくは、エヴァンゲリオンの話にはならなかった。そのため、関心を寄せたものの、あえて見てみたいと思うほどは興味を持たなかったのかな?と感じていた。
それから数か月後、R嬢は実家へ帰ってしまった。数か月間の仲のよい関係はそれで終わってしまった。とはいっても、メールのやりとりはしばらく続いていた。一度メールをすると、その日だけでも20〜30往復するのは当たり前だった。だから、しばらくぶりにメールが来たときも、そんな一連の流れだったのかもしれない。
私はある登場人物を好きと言っていたのですが、それを覚えていたらしく、<なるほど、って思ったよ>との感想を教えてくれた。このとき、しばらくは、アニメの話でメールが続いた。すると、こんなメールになった。
<いま、池袋で働いているの>
え? まさか。ずっと実家に帰っていたので、私はしばらく会えないだろうというモードでメールをしていた。そのため、びっくりしてしまった。しかも、キャバクラで働いている、という。目標の貯金額になったら、辞めるのだという。そういえば、R嬢が夜働いているのは、専門学校に行きたいからだった。その目標はまだ続いているのだろう。
でも、わざわざ池袋で働いていることを教えるというのは、もしかすると、壮大な営業メールだったのだろうか? と勘ぐったけれど、<店に来てね>とは一言も言わない。<行きたいな>と言わせたいのかもしれない。一度、店の子と客との関係としては終わったものだと思っていたが、これからもしばらく続くのでしょうか?
<プロフィール>
渋井哲也(しぶい てつや)フリーライター。ノンフィクション作家。栃木県生まれ。若者の生きづらさ(自殺、自傷、依存など)をテーマに取材するほか、ケータイ・ネット利用、教育、サブカルチャー、性、風俗、キャバクラなどに関心を持つ。近刊に「実録・闇サイト事件簿」(幻冬舎新書)や「解決!学校クレーム “理不尽”保護者の実態と対応実践」(河出書房新社)。他に、「明日、自殺しませんか 男女7人ネット心中」(幻冬舎文庫)、「ウェブ恋愛」(ちくま新書)、「学校裏サイト」(晋遊舎新書)など。
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