春の日差しを浴びると黄金色に輝いて見える。スズカフェニックスの馬体は大目標に向け、研ぎ澄まされ、ほれぼれするような筋肉美を見せつけている。
「昨年もそうだったけど、今年もここに向けてうまく調整できている」と橋田師は静かにうなずいた。これが受けて立つ側の余裕か。師の横顔からは、自分の仕上げさえ見誤らなければという馬への信頼感が伝わってきた。
前哨戦として出走した阪急杯は2着。勝てはしなかったが、収穫は大きな一戦だった。
「今回のレースを想定して、武豊君が中団から内を突くレースをしてくれた」と師は振り返る。開催5週目となった中京は外差しが決まりやすい馬場状態とはいえ、そこはやはりスピード優先の小回りコース。快速アストンマーチャンの回避で、阪急杯で後じんを拝した重賞連勝中の先行馬ローレルゲレイロに有利な展開が予想される。
道中は少しでも前をとらえやすい位置取りからコースロスなく末脚を伸ばす。実際、昨年のこのレースも7番手から抜け出しており、59kgの酷量を背負いながら「試し乗り」で2着した意味は大きい。
「とにかくこの馬は直線をうまくさばけるかどうかにかかっている。負けた時はいつもさばけていないから」と師は言った。
唯一、気になる点といえば、主戦の武豊がドバイ出張のため乗れないことか。しかし、陣営はいち早く福永を確保した。マイル以下の短距離戦での手綱さばきには定評があり、この高松宮記念も2004年にサニングデールでV。2着も一昨年のラインクラフトなど3度と、連対率は5割を誇っている。
「うまく脚をためていければ終いは切れる。スムーズな競馬さえできれば」と福永騎手。師の願いをかなえるだけの技術と実績を福永は持っている。連覇に向けて、すべての態勢は整った。
【最終追いVTR】前半から馬任せでスタート。ラスト1Fに入っても手綱はがっちりと握られたまま。それでも、自ら力強く駆け上がって楽々と50秒7秒の好時計をマークした。昨年以上の仕上がりだ。