結果的にはTRの雪辱というひと言で収まってしまうのかもしれないが、果たしてこれが“次”に直結するかといえば明確な答えは得られず。“とりあえず”の1冠をダイワスカーレットが戴冠した。
スタート直後から向正面を暴走気味に駆けるアストンマーチャンに、これまた引っ張り切れない手応えの勝ち馬。安藤勝騎手が「3角あたりでようやくゆったり走ってくれた」と振り返るように、コントロールがつくまでの道のりは決して楽ではなかった。
それでも、4角では「前回より早め早めの仕掛けで」と安藤勝騎手。小細工なしの正攻法で、外から追撃してくるウオッカに馬体を併せさせることすらなく、力強い脚取りでゴール板を突き抜けた。「ゴーサインを出してから、最後までしっかり走ってくれたからね」。区切りの700勝達成とともに、昨年に続く連覇に鞍上のほおは緩みっぱなし。アンカツにしては珍しい、こん身のガッツポーズまで飛び出したほどだ。
対して断然の1番人気に推されたウオッカの鞍上・四位騎手はレース後、終始、下を向いたままうつむき加減。納得のいかない敗戦に口をつぐみ、報道陣の取材に落胆の表情で答えた。
「いつもは3角あたりで何もしなくてもスーッと並びかけていくのに、今日はそれがなかった。競馬は理想的だったんだけど…」
唸るような手応えのこれまでとは一転、勝負どころでの反応がもうひとつ。上がり3F33秒6と勝ち馬と同じ脚を繰り出しはしたが、無敵の強さを誇ったこれまでとは明らかに脚色が鈍って見えた。
この不可思議な現象に、鞍上は「いつもの走りじゃなかった」と首をかしげるだけにとどめたが、直線を向いた直後にダイワスカーレットに外に弾かれる場面があったのを忘れるわけにいかない。また、世間に賛否両論を生んだエルフィンSへの出走もそうだ。
本番までにレースを使いすぎた結果の調子落ち、あるいは接触により馬がひるんでしまった…とにもかくにも、まだ力負けと結論付けるのは早い。1600mでさえあそこまで行きたがっていた桜の女王がすんなり勝てるほど、府中の2400mは甘くないのだから。