今のように古馬との混合となり、札幌に移ったのが2000年。その1回目を勝ったのがトゥザヴィクトリーだ。
01年のドバイワールドCでキャプテンスティーブの2着、同年のエリザベス女王杯を勝つなど素晴らしい実績を残した。翌春から繁殖入り。06年に産んだ3番子(父キングカメハメハ、牝)はその年の当歳セレクトセールで6億円という史上最高価格で落札され話題になった。
そんな輝かしいキャリアの持ち主だが、意外にも4歳夏で迎えたこのクイーンSが初めての重賞勝利だった。
父はサンデーサイレンス、母の父ヌレイエフという極上の配合。胴長の優雅な馬体がデビュー前から評判になり、1998年12月の新馬戦(1着)では単勝1・4倍という圧倒的な人気を集めた。しかし、牝馬3冠は桜花賞3着、オークス2着、秋華賞13着と無冠のうちに終了。古馬になり、7カ月半の休養を挟みリフレッシュしたエプソムCも5着、続くマーメイドSも2着と勝ち運からすっかり見放されていた。
それでも、メンバーに恵まれたクイーンSは堂々の1番人気に支持された。単勝1.8倍は11戦目で5度目の2倍割れ。もういい加減、ファンを裏切れない。陣営には重圧が漂った。
レースはポンと好スタートを切ったヴィクトリーの逃げで始まった。切れ味をそがれるパワー優先の洋芝で、しかも平坦小回りのコーナー4つ。札幌の1800メートルは逃げ有利が定説だ。そこに逃げれば誰にも競られない藤田を鞍上に据えたのだから、1コーナーを回った時点で「勝負あった」というような展開だった。
1000メートル通過が59秒5の平均ペース。上がりも3F35秒5できっちりまとめてレコードにコンマ1秒差の好タイムだったが、ゴール前でエイダイクインにクビ差まで迫られたのは生来の詰めの甘さか。だが、そこを何とかしのいだこのVをきっかけに、ヴィクトリーは着実に名牝へと進化した。