「さっさと核を放棄し、同じ社会主義国家であるなど共通点の多いベトナムを模範にしろと迫るのが米国の狙いですが、正恩委員長の願いはベトナム化ではありません」(北朝鮮ウオッチャー)
現状、核拡散防止条約(NPT)下にある“核クラブ5カ国(米英仏中ロ)”だけが、国際法的に核保有国と認められている。しかし、核実験を行い核保有国となったインドやパキスタン、推定保有国であるイスラエルの3カ国は、だからと言って国際社会から何ら制裁を受けていない。
さらには、イラクのフセインもアルカーイダの司令官ビンラディンもリビアのカダフィも、米国に“ならず者”と名指しされた指導者は、すべて無惨な最期を遂げている。
「彼ら3人と正恩委員長との違いは、核を持っていたか否かです。持っていれば“斬首”されない。だから核は絶対に手放しません。核が『盾』にも『矛』にもなることを正恩委員長は確信しているのです」(国際ジャーナリスト)
北朝鮮は米国との非核化交渉が行き詰まっても、終戦宣言や平和協定の議論を引き延ばすことができれば、米国が攻撃を仕掛けてくる事態は避けられると思っている。軍事的な脅威が減れば経済の改善に集中できるし、すでに韓国を“からめ手”でひざまずかせているので、開城工業団地や金剛山観光の再開に米国の了解さえ出れば、外貨収入にも道筋がつく。問題は核・ミサイル廃棄をどうごまかすかだ。
「北朝鮮が内陸の山岳地帯にある大陸間弾道ミサイル(ICBM)基地を大幅に拡張していたことが、米CNNが独占入手した衛星画像で明らかになっていますし、米スタンフォード大国際安全保障協力センターは、過去1年に核兵器を最大7個増やすのに十分な燃料を生産した可能性があるとの報告をトランプ政権に上げています。さらに秘密施設を含め濃縮ウラン施設が最大で10カ所前後あるとの米韓当局の分析もあり、北朝鮮が米朝交渉で寧辺にある核施設の破壊を約束しても北の核開発には大きな影響はありません。こうした情報を、なぜかトランプ大統領は黙殺しています」(在米日本人ジャーナリスト)
トランプ大統領はなぜこんなにも北朝鮮に甘いのか。実際、昨年6月の第1回米朝首脳会談後、最大の懸案事項である『CVID(完全な非核化)』は、いつの間にか立ち消えているにもかかわらず、トランプ大統領は「焦っていない。われわれは、ただ(核・ミサイル)実験を願わないだけ」とハードルを下げるどころかゼロにするなど、核廃棄ではなく凍結やICBMの除去だけで、日本を射程内に収める中距離弾道ミサイルが残ってしまう“スモールディール”になるのではないかとの懸念を抱かせるような発言ばかりしている。