守り続けてきた王座は簡単に譲れない。一昨年に続き、ヴァーミリアンが2度目の世界制覇に虎視たんたんだ。
休み明けだった前走のJBCクラシック。直線では一瞬、行き場をなくしたが、ラスト100メートルで自慢の末脚を爆発させた。勝利を確信しかけたマコトスパルビエロをアッという間に交わす。着差はわずかにアタマだったが、力の差は歴然だった。
「差はそんなになかったけど、最内を突いてしっかり伸びてくれたからね。強いレースを見せてくれた」と久保助手もあらためて底力を認識した。
この勝利で史上初のGI8勝を達成した。芝とダートの違いこそあれ、ディープインパクトやシンボリルドルフですら成しえなかった大記録。現役でいながら、すでに伝説の域に到達してしまった感すらある。
だが、陣営はあくまでどん欲だ。GI9勝目に向け、万全の仕上げを施している。25日に行われた1週前追い切りは、栗東坂路で800メートル53秒6。時計が目立たないのはいつものことだ。ぎっしりと筋肉の詰まった馬体、そして迫力ある走りが、目下の充実ぶりを物語っている。
「馬場が悪い中での追い切りだった。それを考えれば上々の時計をマークしてくれている。前走後もすごく元気で順調そのものだよ」
昨年はアメリカ馬に1角と直線で2度も前をカットされた。致命的な不利を受けながら、勝ったカネヒキリから0秒1差…陣営にとっては悔いの残る3着敗退となった。
「あれは本当に悔しかった。今年は精神面でも大人になったし、具合のいい時はきっちりと結果を出してくれるのがこの馬のいいところ。昨年の分も含めて、今回は気持ち良く勝ちたいね」と同助手はうなずいた。
フェブラリーSの覇者サクセスブロッケンに、3連勝中のエスポワールシチー。そして勢いのある3歳馬スーニ、ワンダーアキュート…昨年以上に新興勢力がそろい、骨っぽいメンバーとなった。
しかし、世代交代の波にのみ込まれるつもりはない。今も健在の圧倒的な地力を示し、リベンジを果たすのみだ。