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森永卓郎の「経済“千夜一夜"物語」 ★萩生田発言の含意

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提供:週刊実話

 4月18日に萩生田光一幹事長代行がインターネットテレビに出演して、消費増税延期の可能性を示唆したことは、政界に大きな波紋を広げた。

 萩生田氏は、「景気は非常に回復傾向にあったが、ここへきて日銀短観を含めてちょっと落ちている。次の6月はよく見ないといけない」と話した後で、「せっかくここまで景気回復してきたのに、万が一、腰折れしたら何のための増税かということになる。消費増税をやめるとなれば国民の了解を得ないといけない」と、増税を延期する場合は、衆議院の解散が必要だとの認識まで踏み込んだ。

 萩生田氏は、あくまでも自民党の幹事長代行で政府の人間ではないが、波紋が広がったのは、萩生田氏が安倍総理の側近中の側近だからだ。

 萩生田氏の発言を受けて麻生財務大臣は、「萩生田氏の口から、日銀短観という言葉を聞いたことがない」と皮肉った。経済の専門家ではない萩生田氏が増税延期の可能性を示唆したのは、安倍総理が観測気球を上げたのではないかという指摘だ。私が一番驚いたのは、萩生田氏が「6月の短観をみて」と発言したところ。6月の日銀短観は、7月1日に発表される。つまり、増税まで3カ月を切るタイミングでも、増税延期は可能だということなのだ。

 ただ、現実には、今国会が会期末を迎える6月26日のタイミングで、安倍総理が増税延期の是非を問う形で衆参同日選挙に向かう可能性が一番高いのではないか。

 安倍総理にとって有利なのは、増税延期の理由を海外に求めることができるということだ。

 これは米中貿易戦争の悪影響だけではない。市場では、ヨーロッパが景気後退に入ったという見方が支配的になっている。一部では、欧州発の金融危機発生という見方さえ出始めているのだ。

 さらに、IMFが4月9日に発表した世界経済見通しでは、2019年の世界の実質経済成長率が1月に、同月発表の3.5%から、さらに下方修正されて3.3%となった。この成長率は、リーマンショック後の長期停滞局面の成長率を下回っている。つまり、安倍総理が言い続けてきた「リーマンショック並みの経済危機」に世界経済はすでに陥っているのだ。そうした状況下なら、増税を延期しなければならない理由は、野党が主張するような「アベノミクスの失敗」ではなく、あくまでも日本政府がコントロールできない海外要因によるものだと強弁することが可能になる。

 安倍総理は、消費税増税延期のカードをすでに掌中にしている。4月21日に行われた大阪と沖縄の衆院補選で自民党が惨敗した流れを考えれば、自民党内に安倍総理の掲げる増税延期を否定する声は、さほど強く上がらないのではないか。

 唯一の懸念は、財務省だ。これまで幼稚園や保育園の無償化、軽減税率の導入、ポイント還元など、消費税増税による増収分をすべて使い尽くすくらいの大盤振る舞いで、増税実施への努力を続けてきたのだから、財務省としては、増税延期は絶対に許したくない政策だ。

 これからの2カ月、安倍総理と財務省の間で、消費税増税の延期をかけた壮絶な戦いが、水面下で始まるはずだ。

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