「日本がひとつになる日」は、同じ24日の第2回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の決勝、日本対韓国戦だ。
「いや、こんなにスポーツが国内の話題を独占するなんて羨(うらや)ましい。早く政治もこうなってほしいものですな」
ある野党の大物政治家がテレビで観戦しながら、そう呟(つぶや)いた。
同じ頃、民主党は小沢一郎代表の秘書の政治資金規正法違反で裁かれるかどうか。小沢とその子分たち、鳩山由紀夫幹事長、山岡賢次国対委員長ら、かつての“小沢派”の面々は、この事件を落着させて次の選挙で国民が民主党になびく、その日を語っていた。
そして、翌々日24日の深夜、小沢が涙を浮かべ秘書の不祥事を説明したがどうにも歯切れが悪かった。
3年前の4月、民主党代表に選ばれた小沢は、「変わらずに生き残るためには、変わらなければならない」という名画「山猫」の名ゼリフを引用して、「まず、わたし自身が変わらなければなりません」と大見得を切った。しかし、3年経った今、小沢は少しも変わっていなかった。
民主党は「カネと政治をクリーンにする」のが党是だったのに、その代表は自民党時代からのカネと政治の関係を変えてはいなかったことになる。
政界は、すでに総選挙モードに突入している。24日の小沢の説明で、代表を辞任して民主党も出直す、というコメントでもあるのかと期待した。それは同時に、永田町全体が民主党を見直す時でもあった。
それなのに、小沢は開き直ったのだ。「オレは辞めない」と。この説明を聞いていた国民、いや、それ以上に民主党議員の間には「あの小沢の会見は何なのか」といった落胆の声が大勢を占めた。
「民主党を中心とした政治の波がひとつになるはずが、ひとつになるどころか民主党への期待が雲散霧消してしまいかねない。次の選挙では、もう小沢というか民主党の傘の下では闘えない。いっそのこと、辞めてくれた方が民主党議員には危機感が募り、選挙はいい結果になっているかもわからない」
と、民主党の国会議員の中には小沢以上に半べそをかき、涙さえ流している者もいる。
「なぜ、あの24日の記者会見で『オレは辞める』と言わなかったのかな。このままでは民主党への支持はどんどん下がっていく。やりにくくなるのだけは確かだ」とは中堅の国会議員。
ただし、鳩山だけは「この件に関して何も言わない。あとは麻生(首相)が『国会を解散する』と言わないで、任期まで引きずってくれることを願うしかない。そのうち、国民も小沢の秘書事件を忘れてしまう」というようなことを考えて、じっと我慢しているのか。
「永田町が小沢でひとつになる日」が来ないことだけは、確実になった。(文中敬称略)