昨年9月のリーマンショックに端を発した世界同時不況は“派遣切り”に象徴されるような失業者を大量に生み出している。中でもバブル期に大量に雇用された40代は、今や余剰人員状態だ。
「少し前、生保業界でリストラが相次ぎ転職ブームが起きました。それが今では全体に及んでいます。40代で転職する人は従来なら何度か転職を繰り返していることが多かったんですが、今の不況下では初めて転職する人が多いのが特徴です」
リストラといっても解雇されるケースばかりではなく、早期退職に応じたり関連子会社に出向したりと、自己都合で辞める人も多い。特に40代には楽観論者が多いという。
「私が取材した大学教授によると、今まで上手くやってきた人ほど、これから先も順調と考えがちなんだそうです。ある人の転職例を紹介しましょう。彼は高いマネジメント能力を持っていたので転職先の内定も早めに決まりました。ところが、1カ月もたたないうちに転職先の会社が傾き、内定が取り消されて失業状態。新卒だけじゃなく転職者にとっても内定取り消しという事態は有り得る。一寸先は闇です」
40代の就活で最も気を付ける点は“オレオレ面接”だと指摘する。
「面接で自分のキャリアや経歴を自慢気にひけらかす人が多い。会社=自分と勘違いしているわけで、面接官は抵抗を感じますよ。ただでさえ40代の転職者は扱いづらいわけですから。どう面接先と接点を見出すのか、それが成功のカギです」
いざ就活を始めたとき、自分なりに仕事をやってきたつもりが実は何もなかった、それまで自分の頭で何も考えていなかったことに気が付いてガク然とする40代も多い。
「超えるべきハードルはいっぱいあります。まずは自分のスキルが転職市場にニーズがあるのかを見極めること。仮にスキルを評価されて再就職できても、新しい会社ではヒラから出発することが求められる。それを受け入れられるのか? 転職先の社風を理解すればいいのですが、そう簡単にはいかないものです」
40代の転職者には、独立したものの会社が立ち行かなくなり再就職を目指したという人も多い。なにせ“元社長”だけに、これがまた扱いずらい。
「企業側からは組織人であることを求められるし、中に入って周囲とうまくやっていけるのかも疑問視される。例えば某リサイクルショップに再就職した人は、試用期間が終わった途端に解雇されました。社長から“気が付いたことがあったらどんどん指摘してくれ”と言われたので、その通りにしたら今度は“彼は私に歯向かってくる”と反感を買ってしまった。元社長だけに、どうしても上から目線になってしまったんですね。下からへりくだることが大切だし、何か意見したくても時期が来るまで待つべき。組織にいると人間関係がすべてですから、何か気付いたことがあっても、それを実行できる立場になるまで口にしてはダメ。
昔は職業選び=会社選びであり、会社に所属することが社会への帰属意識だった。でも、そんな図式は今や崩壊している。
「新卒者には何をやりたいのか真剣に考えて就活している人も多い。でも今の40代にはそこまで考えている人は少ないし、安易に辞めるのは危険です。覚悟や決意がないと先々難しいですよ。定期昇給や年功序列なんて、時代の流れの中に消えてしまいましたから」
会社が自分を適正に評価しないという不満から転職へ走るケースも多い。ここにも落とし穴が。
「なぜ自分が評価されなかったのか、その理由を考えてない人がほとんど。転職してもうまくいくわけありません。就活期間中、その欠点に気が付けばいいのですが」
40代ともなると、組織で働くことに向いているかダメな人かという性格がハッキリしてくる。それに合わせて就活することが求められるそうだ。
「石の上にも3年なんて言いますけど、そんなに座っていられません(笑)。今の職場で自己啓発に励み、スキルアップや資格取得など自分から勉強していく姿勢がないと。転職に成功している高齢者には、経理や人事など実務に強い人が多い。会社はあなた自身ではなく、あなたの腕が欲しいのだということを肝に銘じておくべきです」
大企業から中小企業への転職は多いが、中小企業から大企業へはほとんどない。40代の転職には情報誌やハローワークだけでなく、人材紹介会社や未公開募集も重要視すべき要素だ。
「経理部長を募集していますなんて新聞求人広告はありえないでしょう。そうした情報は自分の人脈を活用してキャッチしないと。ミクシィなどインターネットのSNSを活用するのも手。ここで仕事に限らず、人とのつながりを構築していけば、いずれは口コミで望む仕事と出会える可能性もあります」
会社探しではなく仕事探し。仕事の付き合いを抜きにしては人間関係も構築できない。
「昔は会社を辞めてから探してもよかったけど、それじゃ今は遅い。会社にいる間に準備しておかないと間に合いません」
ただ ふみあき 1965年3月31日、宮城県生まれ。日本大学法学部卒。01年に雑誌「ダカーポ」(マガジンハウス)で連載した「誘われてフラフラ」の経験を生かしてキャッチセールス評論家に。新刊に、ゆうきとも(プロマジシャン)との共著「ナレッジエンタ読本15 だましの技術!」(メディアファクトリー)」も。