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マンション傾斜問題後手後手 これから旭化成を待ち受ける巨額損害賠償(2)

 さて、旭化成の社歴をひもとくと、これまで不祥事らしいものは見当たらない。その源泉には「政治力とスキャンダルを抑え込むだけの危機管理能力がある」(企業内部に詳しい事情通)という。
 旭化成は'03年10月、会社分割によって旭化成を持ち株会社とし、その傘下に旭化成ホームズや旭化成ケミカルズなど7つの事業会社を設立した。ケミカルズは全体の約40%を売り上げるリーダー格で、この部門で育ったのが東大薬学部卒で薬学博士の浅野社長だ。

 会社分割当時、82歳という高齢の山口信夫会長が日本商工会議所会頭を退任することが決まったことをきっかけに、同社は経営体制を一気に若返らせている。山口会長に代わって蛭田史郎社長を会長に就任させ、新社長に旭化成ケミカルズ藤原健嗣社長(浅野社長の前任)の昇格を決めた。
 「旭化成は今でこそ日本を代表する大企業ですが、そのルーツは水俣病の補償業務を専業とする日本窒素肥料(現チッソ)です。その旭化成で“中興の祖”といわれたのが、故人の宮崎輝元会長。昭和36年に社長の座へ駆け上がるや、以来“超ワンマン”として経営全般に隠然たるニラみを利かせ、一介の合成繊維メーカーだった同社を総合化学会社に変身させたばかりか、ついには住宅・建材事業にも進出。平成4年に死去するまで実に31年間にわたって経営トップに君臨していたわけですから、政官界にも幅広い人脈を持っていました。会長付の側近として仕えた亀井郁夫氏(元取締役)は後に参院議員を2期務め、その実弟が警察官僚の亀井静香元金融担当相。宮崎元会長が亀井兄弟を物心両面で支援したのは有名な話です」(前出・事情通)

 宮崎元会長の懐刀だったのが平成12年に死去した山口元会長で、政官界で言えば石原慎太郎都知事の3度目の出馬に際し参謀役を買って出た他、財界の読売巨人軍応援団『燦燦会』の会長も務めていた。山口元会長にはこんな逸話もある。
 「某夕刊紙が東京・世田谷の山口元会長邸の土地に関し、実娘に贈与税が掛からない方法で生前贈与したという話を“美談”として報じたのです。ところが翌日、山口元会長は、夕刊紙とは直接関係のない読売新聞の最高幹部を通じて記事の差し止めに動いた。贈与に触れたのは1回だけだったから記事はつぶせませんでしたが、山口人脈の怖さに誰もがビビりました」(同)

 それから十数年。現在の愁眉とも言うべきは、クイ打ちの現場をめぐる攻防戦だ。
 「施工主の三井住友建設は設計段階で、支持層まで2メートル足りない約14メートルと見込んでクイを発注しており、その責任を認めている。建材の現場代理人は、穴の掘削時に支持層に届かないと分かれば三井住友側にそれを伝え、長さを満たす別のクイの発注を依頼する必要があったが、工期終盤で工期内に終わらせたい焦りからか、証言通り支持層に達したと思い込んだからか、再発注を要請していない。両社のこの点に関する攻防が、負担金の分配に影を落としそうです」(全国紙社会部記者)

 国交省も当然ながらこの事件の早期終息を望んでおり、姉歯事件のように捜査当局も重大な関心を寄せている。
 「旭化成をただの下請け会社と侮ってはいけません。同社は昨年、自民党に1200万円の政治献金を行ったことからも察せられるように、多岐にわたる宮崎-山口人脈が現在の経営陣に引き継がれていると考えるべきです。存亡の危機に直面した現経営陣が、このまま分担金を『ハイそうですか』と無条件に受け入れるはずがありませんよ」(同)

 住民の不安をよそに、300億円の負担の分配をめぐる三つ巴のバトルの行方が注目される。

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