次から次へと繰り出される、お客の話がつまみになって、笑いながら聞いていると際限なく居てしまいそうになる。きびきびした女将さんの仕切りではあるけれど、表に出たり陰に隠れたりして働いたりしている八十路の老夫婦。大川のように駘蕩(たいとう)として悠揚迫らぬ(迫れないのかもしれない)対応が、類稀なこの酒場の空気を決定づけているのではないだろうか。
開業は明治30年。あれからいっぱい戦争があったのに、よく残ってきましたね。町歩きの達人川本三郎氏(作家)が、黒澤映画「用心棒」に出てきそうな構えと書かれていた住吉の山城屋とは兄弟店。
いいブツですね。今月の酒ってなんですか。毎月いち押しの酒を廉価で提供、なるほど。品書きはクリップ留め。剥(は)がしやすくて、付けやすい、これもなるほど。中学校の理科の教師がね、教壇でこのクリップを数珠繋(つな)ぎにして生徒に見せてポリクリップだと。これがポリクリップなんだから、さてポリエステルとは何か、と問います。言いましょうか、正解。ポリクリップがクリップでできた暖簾(のれん)なら、ポリエステルはエステルという化学物質の集合組織体だ、分かったかと…。
妙なことを突然思い出しました。常連のみなさんの話ほどは、面白くなかったですね。いやいや、いじけてません、大丈夫です。テレビも点いてますし。店の真ん前がバス停で、秋葉原まで行く。助かります。
じゃあ、また。
予算2500円
東京都江東区南砂1-6-8