注目は昨年の大晦日に行われた『RIZIN.14』(さいたまスーパーアリーナ)のフロイド・メイウェザーとのスペシャルエキシビションマッチで、初のKO負けを喫した“神童”那須川天心の再起戦。今回開催される8人参加の世界トーナメントは、天心がずっと提唱していた。昨年RIZINでの開催が企画されたこともあったが、堀口恭司戦、フロイド・メイウェザー戦といったイレギュラーなビッグマッチが組まれたこともあり、昨年初の世界タイトルを創設したRISEのリングで開催されることとなった。
-58kg世界トーナメントは、天心、志朗(以上日本)、ロッタン・ジットムアンノン、スアキム・PKセンチャイムエタイジム(以上タイ)、フレッド“The Joker”コルデイロ(ポルトガル)、フェデリコ・ローマ(アルゼンチン)、タリソン・ゴメス・フェレイラ(ブラジル)、そして後日発表とされていた最後の1枠にウラジスラフ・ミキータス(ウクライナ)が加わった。3大会でトーナメントを進め、世界6カ国、8選手が優勝賞金1000万円を争う。
天心の1回戦の相手は、アルゼンチンの強豪、フェデリコ・ローマに決定した。フェデリコはRISEに参戦しているイグナシオ・カプロンチと同門。WKN世界タイトルなどを獲得しており63勝4敗1分(31KO)の戦績を誇り、イグナシオの影に隠れていた実力者だ。RISEにはセコンドで常に来日しており、周囲の実力は把握済み。本人はトーナメント制覇へ自信満々だ。
天心とイグナシオは2017年11月に対戦。イグナシオが計量に失敗し、ペナルティーを課された中、天心がKO勝ちを収めた。フェデリコにとってはイグナシオの敵討ちをする意味でも負けられない。「私は“小さな巨人”と呼ばれている、WKN世界チャンピオンだ。パンチ、キック、ヒザのパワーは同階級には負けない。メイウェザーはパンチだけだけど私は全て使える。天心は覚悟して待っていてほしい。私は勝つために日本へ行くよ」とメッセージを送った。
天心は「ちょっと見たんですけど、フィジカルも強そうだし、久しぶりにサウスポーの選手だから戦い方が変わると思います。しっかり研究して、今まで倒したことのない技で倒したいと思っています」と必勝宣言した。
その他1回戦は、スアキム対タリソン、ロッタン対ブレッド、志朗対ミキータスの組み合わせ。天心にとってライバルとなるのは、昨年6月の幕張メッセ大会で、延長の末、何とか判定勝ちを収めたロッタンになるだろう。
ロッタンも「決勝で天心と闘って優勝したい」と名指ししており、天心も「全試合KOで勝つ」と話す一方で、「お互いに勝ち上がれば、ロッタン選手としっかり決着をつけたいので、ロッタン選手にKOで勝ちたい思いが一番強いです」と、過去に自身を最も追い詰めた男との再戦を改めて望んだ。
「今年は昨年経験したものを爆発させる年だと思っています。先日、成人式も迎えましたし、今年もいろいろチャレンジして、このトーナメントで集大成を見せたい。格闘技界にもう1回火をつけたい」
メイウェザー戦後、初の公の場となったが、「あの試合は盗めたこともあったし、良かったことしかない」と“世紀の一戦”に関する雑音を一蹴した。天心の父でTEPPEN GYMの会長の弘幸氏は「天心の力はまだまだ発揮されていない」と語っている。この言葉を証明するには、今回のトーナメントを圧倒的な強さで制し、世界一の称号を胸に次のステージへ進むしかない。今度はトーナメントで優勝して悔し泣きではなく、嬉し泣きをしてもらいたい。
取材・文 / どら増田
写真 / 山内猛