そんな中、泰然自若と構えるのは橋口師。「まだ、みんな成長途上やキャリア不足。2歳のこの時期は一戦、一戦、どんな馬が頭角を現すのか分からない。長年の経験上から見ても、レースが終わってみて、“えっ!こんなに強かったのか”という馬が勝つことが多いからね」と笑う。
が、ここに送り込むオディールに確かな手応えを感じ取っているのも事実。「そうはいっても、実績でいえばウチの馬が一番なのは、みんなが認めるところ。まず、電光掲示板を外すことはないだろう」
クロフネ産駒らしく(?)デビュー戦こそ3着と不覚を取ったが、その後は一戦ごとに“緩さ”が解消。立ち回りのうまさに加えて、俊敏さも備わった。
とりわけ、前走のファンタジーSは圧巻のひと言。同じ京都の千四ながらも、内回りから外回りにかわっただけで、2走前のりんどう賞では“速さ”負けしたエイムアットビップをゴール前、強襲、鮮やかなリベンジVで重賞ウイナーとなった。1F延びて、さらにレースセンスと瞬発力が要求される阪神外回りのマイル戦においては、その一戦ごとの“良化”が大きなアドバンテージとなる。
「終い確実に伸びるのがセールスポイント。折り合いを欠くところが全然ないし、だから末脚が生きるんだ。母はすぐイライラして苦労したが、こちらはそんなところは全然ない。前走後もカイバを食べているしね。直線、差してくるのは間違いないから、あとは突き抜けるのか、差し届かないか。それはやってみなけりゃ分からない」
最後までV宣言をしなかった師だが、母キュンティア(1997年阪神3歳牝馬S2着)がなしえなかった冠を「この初仔で獲る」の熱い思いは言葉の端々に現れていた。競馬はブラッドスポーツ。ドラマチックな幕切れに期待したい。