そもそも、平日に定休日にしていたのか? という疑問もあり、それを知りたくて、この店で以前働いていた子にメールをしたみた。すると、その子から電話がかかってきた、
「おひさしぶりです。私のことを覚えてくれはったんですか? ありがとうございます。京都にいるなら、お店に飲みに行ってくださいよ」
彼女は電話の向こうで大きな声を出しており、元気そうだった。いまは、夜の仕事から足を洗い、昼職に就いているという。仕事は楽しく、キャバクラ時代よりも稼ごうと頑張っている。
ところで、お店の定休日がるのかを確認すると、平日が「定休日」だということが確認できた。しかし、具体的に、いつが休みになるのかは、その月によって違うという。でも、それって、「定休日」とは言わないんじゃないか。そう思ったが、それは突っ込まない。突っ込まない。
「いまどこにいてはるんですか?」
「四条河原町だよ」
「お店から近いじゃないですか? これから飲みに行くんですか? もし、行くのなら、電話がしておきますよ」
キャバクラを辞めても、店の営業はきちんとしているのですね。さすが、私が指名しただけある嬢だ。結局、その店に行くのならことにした。
店の前まで行くと、客引きが、
「渋井さんですか?」
と確認してきた。どのようなことを伝えていたのだろうか。それにしても、私には、電話がで伝えれば分かってしまうくらいの特徴があるんでしょうか? そんなにわかりやすい外見しているわけじゃないと思うんだけどな。
さて、今回もこの店の嬢とどんな出会いがあるのだろうか、と楽しみでいた。その子を指名したときと同じ様に、「ピン」とくる出会いがあるのだろうか。1人、2人とキャバクラ嬢が席に着くが、衝動的に指名したいと思う様な嬢にはなかなかで合わないものだ。
いろいろ考えているうちに、フルーツ盛りがやってきた。私を頼んだのかわけではない。店に来る前に、元キャバ嬢が電話がで伝えたことで、フルーツ盛りが出て来たのだろう。それにしてもいつも思うのだが、なぜ、キャバクラと言えばフルーツ盛りなのだろうか。そんなことを疑問に思った私は、接客しているキャバ嬢に聞いてみた。すると、
「うーん、なんでかな。でも、私はだったら、フルーツ盛りとサキイカを選択できるのなら、サキイカかな?」
といった答えが返ってきた。たしかに、焼酎を飲んでいるので、サキイカという感じではない。でも、フルーツ盛りが出てくる答えは見つからなかった。
結局、この日、指名することなく、ホテルに帰ることになった。なぜ、指名するしなかったのか。もちろん、以前の指名嬢のように、気に入った嬢がいなかったことが大きな理由だ。それもさることながら、嬢たちが、不慣れな部分を見せなかったこともある。そう考えると、私は、育てる余地があると感じれたり、ダメだなと思える嬢でないと、だめなんじゃないかと。改めて思った。
ちなみに、京都に滞在中、元指名嬢とご飯の約束をした。私にも彼女にも予定があったので、滞在期間中に食事が可能な日は、一日だけだった。当日、彼女に連絡を取ると、
「ごめんなさい。今夜は仕事が遅くなる」
とのメールが返って来た。私は迷ったが、仕事をやらなければならないので、東京に戻ることを決めた。
<プロフィール>
渋井哲也(しぶい てつや)フリーライター。ノンフィクション作家。栃木県生まれ。若者の生きづらさ(自殺、自傷、依存など)をテーマに取材するほか、ケータイ・ネット利用、教育、サブカルチャー、性、風俗、キャバクラなどに関心を持つ。近刊に「実録・闇サイト事件簿」(幻冬舎新書)や「解決!学校クレーム “理不尽”保護者の実態と対応実践」(河出書房新社)。他に、「明日、自殺しませんか 男女7人ネット心中」(幻冬舎文庫)、「ウェブ恋愛」(ちくま新書)、「学校裏サイト」(晋遊舎新書)など。
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