TVやインターネット、紙媒体など大手のメディア番組・雑誌においては、表現規制が強くなっているので、メディアを通じて「サブカル」に触れる機会は少なくなった。でも、だからといって、「サブカル」がいま受難の時代を迎えているかというと、そうでもない。もともと、プロフェッショナルとアマチュアを隔てる壁があってないような世界。誰でも何かを発信しやすい今のネット時代はむしろ、「サブカル」的なものがこれまでに以上に世の中に溢れているともいえるのだ。SNSや大手掲示板、動画や写真、イラストに特化した投稿サイトなどでは、常に「サブカル」的なものが大量生産され、消費されている。
こんな時代の到来を早くから予見し、ネット上で独自のメディアを作り上げてしまった人がいる。それが「魔ゼルな規犬」(まぜるな・きけん)だ。
「魔ゼルな規犬」は、東京・大阪・名古屋を中心に活動するミュージシャンであり、パフォーマーだ。自作の前衛的な音楽をバックに、演説パフォーマンスなどを行う。彼の生み出すものが「サブカル」かどうかはさておき、「サブカル」好きのネットユーザーなどからは強い支持を集める。
活動の中心は前述の通り、インターネットだが、年に何度かインターネットを飛び出して、都市圏のライブハウスなどで企画を打つ。これがとにかく特異で人気だ。現代の「見世物小屋」的な、奇天烈なパフォーマーを集めたイベントをするのだ。
ネットでは、動画や写真など様々な情報を発信する。数年前からはインターネットラジオも始めて、週に一度、彼らしいなんとも摩訶不思議な放送を行うようになった。内容はオカルト的なもの、アキバ的なものなどいろいろな要素を散りばめたもので、参加者もミュージシャンからインディーズ映画関係者、お笑い、大学生などバラエティに富む。イベント、ラジオともに内容は見て、聴いてのお楽しみだが、昨今の「サブカル」の傾向とは、また世界観が違っていて面白い。
魔ゼルな規犬の生み出す独自のメディアがなんたるかは、ちょっとドギツイ世界でもあるのでここでは到底説明しにくいのだが、これから自身もと地下サブカル界隈への参入を狙うクリエーターがいれば、まずは彼のホームページの門を叩いてみるのも面白い。作品の奇抜性に加え、彼のしたたかなネット・メディア戦略に触れることができる。
魔ゼルな規犬公式ホームページ
http://sitenn.finito-web.com/
(写真家「東京人物画」名鹿祥史)
http://www.geocities.jp/ondaatjebookers/