去る4月14日、DeNA戦が雨天中止となった。原辰徳監督(56)がインフルエンザに感染した件が発表されたのは同日夜のことで、球団は各メディアに伝えるのと同時に、川相ヘッドにも監督代行を要請していた。川相ヘッドも前日までインフルエンザでチームを離れていた。
「川相ヘッドは原監督と入れ代わるようにしてチームに復帰しました。復帰と同時に監督代行を務めることになりましたが、戸惑いは全く感じられませんでした」(ベテラン記者)
川相ヘッドの監督代行は初めてではない。同14日以降、奇しくも巨人は“常勝街道”に入り、首位戦線に浮上した。
川相采配による初黒星は15日の阪神戦だが、その試合を指して、年長のプロ野球解説者がこう評していた。
「7回表、先頭打者の村田が四球を選ぶと、迷わず、代走のスペシャリストである鈴木を投入しました。次打者の犠打失敗もあり、得点には繋がりませんでしたが、早めに仕掛けた作戦は間違っていない」
対戦チーム・阪神には、クローザーの呉昇桓がいる。9回最後の攻撃になれば、得点のチャンスは少なくなる。実際に『対呉昇桓』となった9回表も、相手の失策に付け込み、阪神ベンチをヒヤヒヤさせてみせた。川相采配を高評価するプロ野球解説者も少なくない。ひょっとしたら、この堅実な采配が巨人の監督後継問題にも影響してくるのではないだろうか。
原監督は今季で契約任期が満了する。経営陣がゴジラ松井にラブコールを送り続けているものの、色好い返事は帰って来ない。渡辺恒夫・球団会長は開幕前に催された巨人の応援組織『燦々会』で、「来季以降も」といったニュアンスを含む発言をし、“再々続投”も示唆したのは、松井氏を説得できていない事情も影響していたはずだ。
「いや、この状況で松井クンに次の監督をお願いするのは申し訳ない。有力候補である高橋由伸に対しても同様です。野手陣は世代交代のはざまにあり、若手はまだ一人前に育っていない」(関係者の1人)
原監督の続投が“ゼロ”になっていないのも、そのためだろう。
「松井待望論」が尽きないのは、人気回復のため。巨人は2年連続で主催ゲームの観客数を増やしたが、地上波でのナイター中継数は激減したまま。営業面で期待する向きがあるのは仕方ないとしても、チームの課題は野手陣の世代交代を進めること。松井氏に人気回復、世代交代、優勝の3つを課すのは気の毒な話であり、大田泰示、橋本到、岡本和真らの若手を一人前に育て上げた後に「松井氏か、高橋由伸を監督にし、長期政権を」というのが、もっとも自然な流れだろう。
そこでクローズアップされてきたのが、川相代行の堅実な野球だ。同ヘッドコーチは二軍監督を務めた経験もあり、大田、橋本らの性格も分かっている。『原-川相』の継承ラインもあり得るのではないだろうか。
また、ポスト原が内部昇格ならば、「次はゴジラ松井」というファンの期待も継続できる。
「近年、巨人監督に選ばれたOBは読売新聞スポーツアドバイザー職を務めてきました。その図式から考えると、現在、その職にある鹿取義隆氏も候補の1人です」(前出・ベテラン記者)
本命・ゴジラ松井を招聘する前に、巨人は世代交代という課題をクリアすべきである。