希望の党が失速したきっかけは、小池百合子代表が民進党のリベラル議員を「排除する」と発言し、憲法改正と安全保障関連法賛成の「踏み絵」を突き付けたことだった。これで小池代表は完全な「いじめっこ」の立ち位置になってしまった。一方、いじめを受けた枝野幸男代表の立憲民主党は55議席と、野党第一党に躍り出た。やはり日本人は判官びいきというのか、弱い者の味方をする国民なのだ。
ただ、選挙は終わったが、政界再々編は、これからがスタートだ。おそらく、無所属当選組や希望の党から、立憲民主党への参加者が次々に出てくると思われる。前原氏が「全員で希望の党に行く」と表明したから、それに従っただけなのに、意に反する踏み絵を踏まされた「隠れリベラル」が、希望の党の中にはたくさんいるからだ。
そして、民進党自体も反撃に出てくるだろう。前原氏が自らは無所属で立候補しながら民進党を離党しなかったのは、総選挙のあと、民進党の参院議員も希望に合流させるためだった。しかし、反乱は選挙期間中から起きていた。
10月16日、民進党の蓮舫前代表は横浜市中区で立憲民主党公認候補の応援に立ち、「『排除する』『想定内』。耳を疑いました」と語り、希望の党や前原氏を痛烈に批判した。それは当然だろう。小池百合子代表が「全員を受け入れることはさらさらない」と発言したとき、それに反発した議員が合流見送りを決めたことを受けて、前原氏は「すべて想定内」と語った。つまり最初から全員を希望の党に連れて行く気などなかったということだ。
私は前原氏が責任を取り、即刻辞任するとみていた。ところが驚いたことに、前原氏は自身の希望の党会派への所属を表明しながら、同時に民進党代表も当面続投する方針を示したのだ。おそらく140億円とも言われる民進党の資金を奪っていくためだったのだろう。
しかし、民進党に党籍を残す無所属当選組と参院議員からは批判が殺到。前原氏は10月27日の両院議員総会で辞任を表明した。
今後は、民進党が立憲民主党を吸収合併する形で新民主党を作り、そこに無所属議員や希望の党にいる隠れリベラルを呼び寄せるのではないか。それなら民進党が保有する資金を希望に奪われることはないし、野党第一党として、さらに大きな存在感を示せるからだ。
今回の選挙の最大の成果は、党内の左右対立から政策がブレ続けた民進党から、右派勢力が希望に移ったことで新しい民主党がリベラル政策を鮮明に打ち出せるようになったことだと思う。それに対抗するため希望の党は、思い切り保守の政策を打ち出せばよい。
左右を幅広く取り込む与党とリベラルの民主党、保守の希望や維新という3極に政界が再編。そうなれば、国民が政策で候補者を選べるようになる。残念ながら、今回の選挙は、そのことだけが成果と言えるのではないだろうか。