中山はNZT勝ち(2006年)を含め、<3021>と抜群の安定感を誇るマイネルスケルツィ。着外だった今春のダービー卿CT(6着)も、「直線で前が詰まる不利があって脚を余して負けた」(桑原調教厩務員)というだけに、まさに自分の庭同然のコースだ。
「賞金が足りないので、最高で1着、最低でも2着は譲れないですね。賞金を加算して、GI(マイルCS)に弾みをつけたい」と桑原さんは不退転の決意で挑む。
マイル戦はNZT、京都金杯と重賞2勝を含む4勝を挙げており、適性は高い。「休み明けでまだ八分のデキだった」という関屋記念で3着と好走。真骨頂を見せつけている。
「レース前に石橋脩(騎手)と作戦を立て、早めに抜け出す競馬をした」と桑原さん。「一瞬、勝っちゃうんじゃないかって思いました(笑)」
鬼門の左回りでこれだけのパフォーマンスをしただけに、桑原さんは意気軒昂。「1度使って九分以上のデキに仕上がったし、コースがわりもアドバンテージ。チャンスは十分あると信じています」
最終追い切りがまた圧巻だった。ポリトラックコースで石橋脩騎手が騎乗。5F64秒8→51秒7→38秒0→11秒7の出色のタイムをまったくの馬なりで叩き出したのだ。
「石橋脩が『速すぎませんでしたか。大丈夫ですか』って、オーバーワークを心配していたけど、馬は楽しんで走っているようだった」と桑原さんは終始、ご満悦だった。
厩舎人として節目の10年目を迎えた桑原さん。悲願の初重賞制覇を目指す新婚ホヤホヤの石橋脩騎手。二人の思いが一つに重なり、大願を成就する。