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防災に備えろ! 全国52万カ所 “土砂崩れ”危険地帯マップ(1)

 死者、行方不明者合わせて88人(8月24日時点)に上った、広島市北部の土砂災害。警察や消防、自衛隊などによる懸命な救助活動が行われているが、大規模自然災害の爪痕を前に難航を極めている。
 「現場周辺は風化した花崗岩が堆積した『真砂土(まさど)』と呼ばれる地層が広がり、水分を多量に含んで重くなっている。これが新たな土石流を発生させる可能性も高く、捜索は容易なことではありません」(地元記者)

 8月20日に広島市安佐南区、安佐北区を襲った豪雨では、南から暖かく湿った空気が流入し、積乱雲が連続的に発達してできる『バックビルディング』と呼ばれる現象が起きたとみられている。
 気象予報士の井坂綾氏が説明する。
 「通常の積乱雲発生は、極めて局所的な現象で寿命は1時間ほど。その間に20〜30ミリ程度の雨を降らせるぐらいです。これに対し、一つの積乱雲が消滅しても背後に次から次へ積乱雲が発生し、100ミリ前後の膨大な雨が数時間にわたり持続的に降るのが、バックビルディング現象。風上の積乱雲が建ち並ぶビルのように見えることからこう呼ばれますが、広島上空で起きた原因は、太平洋高気圧の外側に沿って南から豊後水道を経て流れてきた湿った空気と、南西からの湿った空気が日本海に延びた前線に向かって流入し、上空でぶつかったことにあります」

 地形的な要因もある。その空気が中国山地にぶつかり上昇気流が生じ、20日未明は急激に積乱雲が発達していたのだ。
 「豪雨は夜間から早朝にかけて起きる割合が高いことが、多くの研究によって示されています。なぜなのかはっきりしたことはわかっていませんが、夜間は上空の気温が低く、雲ができ始める高さが低くなる。そこから雨の降りやすい状況ができ、背の高い雲ができるのです」(井坂氏)

 役所の対応が後手に回っていたことも明らかになっている。
 「一部ではあるが、避難勧告の基準を上回る雨量があったんですよ。しかし、結果的に担当者が躊躇している間に地滑りが起き始めてしまった」(地元記者)

 今回、広島市では午前1時に土砂災害警戒情報が発表され、午前3時には安佐南区や安佐北区で地中の雨量が水防計画の基準を超えた。しかし、この計画に「今後の気象予測を勘案して対応する」という一項があるために、この時点で勧告は出されなかった。
 しかし雨量は増し、午前4時には基準の倍に。ようやく最初の勧告が出たのは安佐北区で午前4時15分、安佐南区で同30分。土砂崩れや生き埋めの通報がすでに3時ごろから相次いでいたことを考えても、これらの勧告がまったく意味を成さなかったことがわかる。広島市は'99年、県内で31人の死者が出た豪雨災害時に避難勧告を出せなかった反省から、勧告を検討する基準を水防計画で定めたのだが、今回も生かすことができなかったわけだ。

 防災ジャーナリストの渡辺実氏が言う。
 「今回あれだけの犠牲者が出たのは、バックビルディング現象が発生したことや、被害地域の地盤が緩く深夜であったことなど、悪条件が重なったからです。メディアや評論家の先生方は避難指示が遅かったといろいろ語っているが、住民が撮影した映像を見る限り、あれだけの豪雨が降りしきる中で避難指示など出せない。このような異常気象が続く今は、情報を待って避難するのではなく、自分で判断する時代なんですよ。自治体のハザードマップを見るのはいいことだが、私は義務教育の中で居住する地域の地学を教えるべきだと思います。どういう地盤で、大雨が降るとどのようなリスクがあるのか頭に入っていれば、自分で考えて行動することができる」

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