「前走はチグハグな仕上げで内臓面も気持ちも仕上がり切っていなかった。今度は相当な上積みが見込める」と昆調教師はうなずいた。
威風堂々。栗色の馬体は筋肉が盛り上がり、究極のアスリートを思わせる。23日に栗東坂路で行われた1週前追い切りは800メートル52秒4→37秒9→12秒4の鋭さだった。
「馬場状態もあってダービーのときほど時計は出ていないけど、2F目が11秒9だし、ラストまでよく動いている。文句なしの走りだった」
師が振り返ったように、前走の神戸新聞杯は今ほどのオーラを発していなかった。夏の札幌競馬場から順調に乗り込まれたものの、もともとが叩き良化型。体に張りがなく、覇気も物足りなかった。
しかし、終わってみれば早めの仕掛けからあっさり押し切った。当時、3着に退けたオウケンブルースリが菊花賞を快勝したことからも、3歳世代では断然の能力があることを改めて証明した。
もちろん菊花賞へ向かう選択肢もあった。それをあえて厳しい古馬との戦いに身を投じたのは、ディープへの信頼と、舞台設定に魅力を感じたからだ。
春にはNHKマイルCとダービーを圧勝した東京。ここも勝てば前人未到の「東京3冠」という快挙を達成する。そして距離もいい。
「これまでのベストパフォーマンスはNHKマイルC。二四のダービーは何とか勝ってくれたという印象だった。距離は千六から二千がピッタリでしょう。この条件なら少々の不利もはねのけられる」とうなずいた。
ウオッカがいて、ダイワスカーレットがいて、古馬の男たちも実に層が厚い。だが、山は高ければ高いほど登りがいがある。
「チャレンジャーとして力まずに臨める。どんな競馬をしてくれるか、楽しみだね」
トレーナーの視界には、雲ひとつない青い空が広がっている。
四位騎手を背に坂路入り。スタートからゆったりとした走りで、最後まで仕掛けられることなく終了。直前は「静」に徹したが、動きは前走時より明らかに素軽く、使って馬体にもボリュームが出てきた。叩いた上積みは相当だ。