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本好きオヤジの幸せ本棚(23)

◎オヤジ人生にプラス1のこの1冊
『ホテルブラジル』(古川春秋/角川書店 1260円)

 振り返れば20年ほど前のことなのだ。1993年から翌年にかけてクエンティン・タランティーノ監督の映画『レザボア・ドッグス』『パルプ・フィクション』が公開された。これを機に、日本人の犯罪映画に対する新しい感受性が生まれた。従来主流だった、正義の味方と悪玉とがはっきり分かれている勧善懲悪ストーリーをあざ笑うかのように、道徳心が欠落した者ばかり登場する世界。タランティーノは日本の映画のみならず小説にも影響を与えた。馳星周、東山彰良、平山夢明といった作家の活躍が好例である。
 第3回野性時代フロンティア文学賞を得て刊行された本書も、確実にこの流れに入る。東京から離れた山道でレイプされかけた彼女を救うため、大場次晴は男と乱闘し、誤って殺す。しかも何かの拍子に相手と手錠でつながってしまった。死体をスーツケースに押し込めて歩いているうちにたどり着いたのは、他に客のいないホテル。実は男は裏社会に精通した者たちに追われる身であった。次晴に襲いかかるトラブルの規模はあっという間にふくらんでいく…。際限のないバイオレンス、ドライなユーモア、目まぐるしいスピーディーな展開は、ぐいぐいと読者を引き込む力に満ちあふれている。作者のデビュー作であるが、そのハチャメチャさ、破壊性は尋常ではないのである。得体の知れないエネルギーを持つ作家の誕生だ。
(中辻理夫/文芸評論家)

◎気になる新刊
『平凡パンチ特別編集 楽園の妖精 アグネス・ラム写真集』(マガジンハウス・3990円)

 '70年代に一世を風靡したハワイ生まれのアイドル、アグネス・ラム。彼女の美しい姿はいまも脳裏に焼き付いている。当時撮影された膨大なフィルムの中から厳選した完全保存版写真集。等身大のポスター付きだ!

◎ゆくりなき雑誌との出会いこそ幸せなり

 表紙は『探偵物語』の工藤ちゃん、つまり松田優作。ページを開くとRCサクセションの頃の尖っていた忌野清志郎、土曜夜8時に貪るように見た『全員集合!』の“長さん”こといかりや長介−−。創刊号にそうした面々を特集した『昭和40年男』(クレタパブリッシング/680円)は、その名の通り1965年前後に誕生し、現在40代後半を生きる男のための雑誌だ。今後は奇数月に発売される隔月刊誌として書店に並ぶ予定だという。
 他にも『マジンガーZ』を生んだ漫画家・永井豪、40代が今でもカラオケの定番ソングとして歌う『勝手にしやがれ』の歌謡曲王・沢田研二など、懐かしい名前が並ぶ。中年オヤジが影響を受けた様々な人、テレビ番組、漫画などが、イキイキと甦ってくる誌面は楽しさ満載。
 創刊の目的は、40年生まれの中年男たちに誌面を通じ、『明日への元気と夢』を持ってもらうことだという。懐かしいヒーローたちに接することで、読後は確かに元気がモリモリと出てくる。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

 ※「ゆくりなき」…「思いがけない」の意

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